「漢方薬は種類が多すぎて、どれを選べばいいかわからない」と感じている方は少なくないのではないでしょうか。
実は漢方には、とてもシンプルな考え方がベースにあります。それが「体質」という概念です。西洋医学が病名で薬を選ぶのに対して、漢方はあなたの体質に合わせて薬を選ぶのが基本なのです。
この記事では、体質別の漢方薬の選び方を、初めての方にもわかりやすく丁寧に解説していきます。自分の体質を知ることが、漢方選びの第一歩になりますので、ゆっくり読み進めてみてください。
漢方の「体質」とは?東洋医学の基本の考え方
漢方の世界では、体を構成する要素を「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つに分けて考えます。この3つのバランスが崩れると、体に不調が現れるという考え方です。
そして、どこがどう崩れているかによって、大きく5つの体質タイプに分類できます。
- 気虚(ききょ):エネルギー不足タイプ
- 血虚(けっきょ):血が足りないタイプ
- 気滞(きたい):エネルギーが滞るタイプ
- 瘀血(おけつ):血の巡りが悪いタイプ
- 水滞(すいたい):水分が溜まるタイプ
実際には、ひとつだけではなく複数のタイプが重なっている方がほとんどです。「自分はこれに近いかな」くらいの気持ちで読み進めてみてください。

気虚タイプ:疲れやすい・やる気が出ない方の漢方選び
気虚は、わかりやすく言うと「体のエネルギーが足りていない」状態です。以下のような症状に心当たりはありませんか。
- すぐ疲れる、だるい
- 風邪をひきやすい
- 食欲がない、胃腸が弱い
- 声が小さい、息切れしやすい
- 汗をかきやすい
気虚タイプにおすすめの漢方は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。名前のとおり「中(胃腸)を補って気を益す」という意味で、疲労回復の代表格として広く使われています。
胃腸の弱さが目立つ方には六君子湯(りっくんしとう)がおすすめです。食欲不振や胃もたれがメインの症状であれば、こちらのほうが合うことが多いです。
気虚タイプの養生ポイント
漢方を飲むだけでなく、生活面の見直しも大切です。気虚の方は無理をしないことが一番の養生です。激しい運動よりもウォーキングや軽いストレッチ、食事は温かいものを中心にするのがポイントです。
血虚タイプ:肌や髪のトラブルが多い方の漢方選び
血虚は「血が足りない」状態を指します。西洋医学の貧血とは少し異なり、血の質や量が不十分な状態のことです。
- 顔色が悪い、青白い
- めまい、立ちくらみ
- 肌がカサカサ、髪がパサパサ
- 爪が割れやすい
- 生理量が少ない、周期が長い
- 眠りが浅い
血虚タイプの代表的な漢方は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)です。血を補いながら水の巡りも整えてくれる、女性に人気の処方です。
しっかり血を補いたい場合は十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)が頼りになります。気も血も両方補ってくれるので、体力が落ちているときにも適しています。
血虚タイプの食事のコツ
レバー、ほうれん草、黒ごま、なつめ、クコの実などがおすすめです。東洋医学では「赤い食材」「黒い食材」が血を補うと考えられているので、意識して取り入れてみてください。

気滞・瘀血タイプ:ストレスフル・巡りが悪い方の漢方選び
気滞タイプの特徴と漢方
気滞は「エネルギーの流れが詰まっている」状態です。ストレスが原因になることが多いです。
- イライラ、怒りっぽい
- お腹が張る、ガスが溜まる
- のどに何か詰まった感じがする
- 生理前にPMS症状がひどい
- 気分の浮き沈みが激しい
気滞タイプには加味逍遙散(かみしょうようさん)が定番です。PMSや更年期のイライラにも幅広く対応します。のどの詰まり感がメインなら半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が合うことが多いです。
瘀血タイプの特徴と漢方
瘀血は「血の巡りが悪い」状態です。気滞が長引くと瘀血に発展することもあります。
- 肩こりがひどい
- シミ、クマができやすい
- 生理痛がひどい、経血にレバー状の塊が混じる
- あざができやすい
- 唇や歯茎の色が暗い
瘀血タイプには桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)がおすすめです。血の巡りを改善する代表的な漢方として知られています。
水滞タイプ:むくみ・めまいが気になる方の漢方選び
水滞は「体に余分な水分が溜まっている」状態です。日本人には比較的多いタイプとされています。
- むくみやすい
- めまい、耳鳴り
- 天気が悪いと体調が崩れる
- 胃がちゃぽちゃぽする
- 下痢しやすい
- 鼻水、痰が多い
水滞タイプの代表は五苓散(ごれいさん)です。水分バランスを整えてくれる漢方で、二日酔いにも使われるほど守備範囲が広いです。天気痛(気象病)で悩む方にも人気があります。

自分の体質を知るためのセルフチェック方法
舌を見るのが最も手軽なセルフチェック方法です。朝起きてすぐ、鏡の前で舌を出してみてください。
- 色が薄い、白っぽい→気虚 or 血虚の傾向
- 紫っぽい、暗い色→瘀血の傾向
- 苔が厚い、ベタベタ→水滞の傾向
- 舌の縁に歯形がついている→気虚 or 水滞の傾向
ただし、セルフチェックはあくまで目安です。本格的に漢方を始めたい場合は、漢方に詳しい薬剤師や医師に相談するのが確実です。
参考:日本漢方生薬製剤協会
参考:日本東洋医学会
漢方の体質タイプは固定ではなく、季節や生活環境によって変化します。定期的に自分の体質を見直す習慣をつけると、より効果的な漢方ライフを送れます。
まとめ:体質を知ることが漢方選びの第一歩
漢方薬の選び方で最も大切なのは、「自分の体質を知ること」です。同じ症状でも体質が違えば選ぶ漢方も変わるのが、漢方の奥深いところでもあります。
まずは今回紹介した5つのタイプのうち、自分がどれに近いかを考えてみてください。そして気になる漢方があれば、薬局や漢方外来で相談してみることをおすすめします。
セルフチェックの結果だけで漢方薬を選ぶのは避けましょう。正確な体質判断には、脈診や腹診を含めた専門家の診察が必要です。
よくある質問
Q. 複数の体質タイプに当てはまる場合はどうすればいいですか?
ほとんどの方は2〜3タイプに該当します。最も当てはまるタイプを主体質として捉え、専門家に相談して総合的に判断してもらうのが確実です。
Q. 体質は一生変わらないのですか?
体質は生活習慣や季節、加齢などで変化します。定期的にチェックし直すことで、そのときの体に合った漢方を選べるようになります。
Q. 市販の漢方薬を自分で選んでも大丈夫ですか?
軽い症状であれば市販品で試すことも可能ですが、体質に合わない漢方を選んでしまうリスクがあります。初めての方は薬剤師に相談してから購入することをおすすめします。


