生理前になるとイライラが止まらない、急に涙が出る、体がむくんでだるい。そんなPMS(月経前症候群)の症状に悩む女性はとても多いです。日本では生理のある女性の約7〜8割が何らかのPMS症状を感じているとされています。
漢方医学ではPMSを「肝」の気の滞りと「血」の乱れから起こると考えます。西洋医学ではホルモンバランスの問題として扱いますが、漢方は心身両面からアプローチするのが大きな特徴です。

漢方で見るPMSの3タイプ
肝気鬱結タイプ(イライラ型)
生理前にイライラ、怒りっぽくなる、胸が張るといった症状が出るタイプです。「肝」の気が滞ることで感情のコントロールが難しくなる状態です。ため息が多くなるのも特徴的です。
心脾両虚タイプ(落ち込み型)
生理前に気分が沈む、不安になる、眠れない、集中力が落ちるタイプです。「心」と「脾」の気血が不足し、精神的な安定を保てなくなる状態です。不安感の漢方対策は以下の記事も参考にしてみてください。

脾虚湿盛タイプ(むくみ型)
生理前にむくみがひどい、体重が増える、だるいといった症状が出るタイプです。体内の水分代謝が滞り、余分な「湿」がたまっている状態です。
PMSにおすすめの漢方薬5選
主な症状が精神面か身体面か、イライラ型か落ち込み型かで最適な処方が変わります。以下の記事もあわせてご覧ください。



1. 加味逍遙散(かみしょうようさん)
PMSの第一選択薬と言われる漢方薬です。イライラ、不安、のぼせ、肩こりなど多彩な症状に幅広く対応します。「逍遙」は「気ままにぶらぶら歩く」という意味で、気持ちをリラックスさせる作用があります。体力が中程度以下の方に向いています。
2. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷え性でむくみやすい方のPMSに効果的です。血を補い水はけを良くすることで、生理前のむくみやだるさを改善します。貧血気味で疲れやすい方に向いており、妊活中の方にも安心して使えます。
3. 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
体力があり、便秘がちで生理前にのぼせやイライラがひどい方に適しています。瘀血を強力に改善する処方で、下腹部の抵抗感や圧痛がある方に効果的です。比較的体力がある「実証」の方向けです。


4. 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
神経が高ぶりやすく、怒りや不安が強い方に向いています。気分のムラや感情の爆発を穏やかに鎮めてくれます。胃腸が弱い方でも飲みやすいよう陳皮と半夏が加えられた処方です。
5. 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
喉がつかえる感じ、不安感、気分の落ち込みが強い方に効果的です。漢方で「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれる喉の異物感はPMSでもよく見られる症状で、この処方が得意とする分野です。
PMS漢方薬の効果的な飲み方
排卵後〜生理開始まで(黄体期)だけ飲む「周期療法」と、毎日継続する方法があります。症状の重さに応じて医師と相談しましょう。
PMSの漢方治療では、まず2〜3周期は毎日継続して服用し、効果を確認するのが一般的です。改善が見られたら、症状が出やすい排卵後のみの服用に切り替えることもできます。
生活面では、カフェインやアルコールの制限、適度な有酸素運動、十分な睡眠が重要です。漢方的には「肝」をいたわる養生として、ストレス発散と規則正しい生活リズムが最も大切です。
PMSの漢方治療について、漢方ビューにも詳しい解説があります。また、日本産科婦人科学会のPMS情報も併せて確認してみてください。


PMSに漢方が取り入れられる背景
生理前の心身の揺れは、周りに理解されにくく、一人で抱え込みやすい悩みです。妊娠可能年齢の女性の多くが何らかのPMS症状を経験するとされ(妊娠可能年齢の女性の約20〜50%/日本産科婦人科学会)、心と体の両面から向き合う漢方の考え方は、こうした揺れに寄り添う選択肢のひとつとして取り入れられています。
漢方ではPMSを、ストレスで「肝」の気が滞ることや、「血」「水」の巡りの乱れが重なって起こると捉えます。そのため、イライラが中心なのか、落ち込みが強いのか、むくみやだるさが目立つのかによって、選ばれる処方が変わってくるのが特徴です。「どの症状が一番つらいか」を整理することが、自分に合う処方への近道になります。
イライラ・のぼせが中心なら加味逍遙散、冷え・むくみ・貧血ぎみなら当帰芍薬散、便秘とのぼせが強く体力があるなら桃核承気湯、神経の高ぶりが強いなら抑肝散加陳皮半夏、喉のつかえや不安感が強いなら半夏厚朴湯、というように症状の中心から絞っていきます。


周期に合わせた漢方の取り入れ方
PMSの漢方では、まず2〜3周期は毎日続けて服用し、症状の出方がどう変わるかを確かめるのが一般的な流れです。落ち着いてきたら、症状が出やすい排卵後から生理開始まで(黄体期)に絞って飲む「周期療法」に切り替える方法もあります。どちらが合うかは症状の重さによって変わるため、医師や薬剤師と相談しながら決めていきましょう。
漢方薬は食前または食間に白湯で飲むのが基本とされ、温かい状態で飲むと香りが立って飲みやすいと感じる方が多いようです。記録アプリなどで症状と生理周期をメモしておくと、「生理の何日前から不調が出るか」が見えてきて、飲み始めるタイミングの目安にもなります。感じ方には個人差があるため、3ヶ月ほど続けても様子が変わらないときは処方の見直しを検討しましょう。
気分の落ち込みが非常に強く日常生活に支障が出る場合は、PMDD(月経前不快気分障害)の可能性もあります。漢方だけで抱え込まず、婦人科や心療内科など専門の窓口に相談することも大切です。
PMSと上手に付き合ううえで意外と役立つのが、自分の「揺れ方のクセ」を知っておくことです。生理の何日前からイライラが出るか、どんな場面で落ち込みやすいかをあらかじめ把握しておくと、予定を詰め込みすぎない、その時期は早めに休むといった前もっての備えがしやすくなります。周囲に一言伝えておくだけでも気持ちがラクになることがあります。漢方はこうしたセルフケアや生活の工夫と組み合わせることで、無理なく続けやすくなります。
生活面では、カフェインやアルコールをとりすぎない、軽い有酸素運動を習慣にする、睡眠時間を確保するといった工夫が、漢方薬とあわせて取り組みやすいポイントです。PMSの情報は日本産科婦人科学会のページでも確認できます。
よくある質問
Q. PMSの漢方薬はどのくらいで効きますか?
早い方は1周期目から変化を感じますが、体質改善には2〜3周期の継続が目安です。3ヶ月飲んでも変化がなければ処方の見直しを検討しましょう。
Q. 加味逍遙散と当帰芍薬散、どちらを選べばいい?
イライラ・のぼせが主症状なら加味逍遙散、冷え・むくみ・貧血が主症状なら当帰芍薬散です。迷ったらクラシエの体質チェック(www.kracie.co.jp・サイト終了)を試してみてください。
Q. 低用量ピルと漢方は併用できますか?
併用は可能ですが、ピルで改善しない症状に漢方を追加するケースが多いです。必ず処方医に併用を伝えてください。
Q. PMSではなくPMDD(月経前不快気分障害)でも漢方は効きますか?
PMDDは重度のPMSで、精神症状が非常に強い状態です。漢方単独では難しい場合もあり、精神科やSSRIとの併用が検討されることがあります。
Q. 生理前だけ食欲が止まらなくなります。漢方で対応できますか?
黄体期の食欲や気分の波もPMSの一部とされています。気や血の巡りに着目した処方が用いられることがありますが、まずは自分の症状の中心を整理し、薬剤師や医師に相談すると選びやすくなります。個人差があります。
Q. PMSの漢方は市販でも買えますか?
加味逍遙散や当帰芍薬散などは、ドラッグストアでも取り扱いがあります。選び方に迷うときは、店頭の薬剤師や登録販売者に体質と症状を伝えて相談するのがおすすめです。
Q. 更年期の不調にも同じ漢方が使えますか?
加味逍遙散や当帰芍薬散は、更年期の揺らぎの相談でも用いられることがあります。ただし年代や症状によって適した処方は変わるため、医療機関で確認すると安心です。
Q. 生理前のむくみが特につらいのですが、どの処方が候補ですか?
むくみやだるさが中心のタイプには、水分の巡りに着目した当帰芍薬散などが用いられることがあります。塩分をとりすぎない、軽く体を動かすといった日常の工夫もあわせて取り入れると良いでしょう。個人差があります。
Q. 漢方薬を飲み始めるのに良いタイミングはありますか?
症状と生理周期をメモしておき、「生理の何日前から不調が出るか」を把握すると、飲み始めの目安が立てやすくなります。まずは2〜3周期続けて、症状の出方の変化を確かめるのが一般的です。
Q. PMSの漢方は苦くて続けにくいのですが、飲みやすくする方法はありますか?
白湯に溶かして温かい状態で飲むと香りが立って飲みやすいと感じる方が多いようです。味が苦手なときは、服薬用のゼリーやオブラートを使う方法も知られています。続けることが大切なので、自分に合う飲み方を見つけてみてください。


