「漢方は天然だから副作用がない」「植物由来だから安全」と思っている方はいらっしゃいませんか。
はっきりお伝えすると、これは完全に間違いです。漢方薬にも副作用はありますし、飲み合わせの注意点もあります。
この記事では、漢方薬を安全に使うために知っておくべき副作用と注意点について、丁寧に解説していきます。正しい知識を持つことが、漢方を安心して活用する第一歩です。
漢方薬で起こりうる代表的な副作用
漢方薬の副作用は、主に含まれている生薬の成分によって起こります。代表的なものをご紹介します。
甘草(かんぞう)による副作用:偽アルドステロン症
漢方の副作用で最も注意が必要なものです。甘草に含まれるグリチルリチンという成分が原因で、以下の症状が起こることがあります。
- 血圧が上がる
- むくみが出る
- 手足に力が入らない
- 低カリウム血症
特に注意すべきは、甘草が非常に多くの漢方に含まれているということです。葛根湯にも、芍薬甘草湯にも、補中益気湯にも入っています。複数の漢方を同時に飲んでいると、知らないうちに甘草の摂取量が増えてしまうリスクがあります。
麻黄(まおう)による副作用
麻黄はエフェドリンという成分を含んでおり、交感神経を刺激する作用があります。
- 動悸、頻脈
- 不眠
- 発汗過多
- 食欲不振
- 排尿困難(特に前立腺肥大のある方)
麻黄が含まれる漢方は、葛根湯、麻黄湯、小青竜湯、防風通聖散など。高血圧の方や心臓に持病がある方は特に注意が必要です。

大黄(だいおう)による副作用
大黄は下剤としての作用がある生薬です。防風通聖散や大柴胡湯に含まれています。下痢や腹痛のほか、長期使用で腸のメラニン沈着(大腸メラノーシス)が起こることもあります。
附子(ぶし)による副作用
附子はトリカブトの根を加工したもので、体を温める作用が強い生薬です。用量を間違えると、のぼせ・ほてり・動悸・しびれなどが起こることがあります。処方量を守ることが特に重要な生薬のひとつです。
間質性肺炎:見逃してはいけない重篤な副作用
頻度は低いものの、漢方で最も注意すべき重篤な副作用が間質性肺炎です。特に小柴胡湯で報告が多くなっています。
以下の症状が出たらすぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。
- 発熱
- 空咳が続く
- 呼吸が苦しい
- 息切れがひどい
特にインターフェロン製剤を使用している方は、小柴胡湯との併用が禁忌とされています。
漢方薬の飲み合わせで注意すべきこと
漢方同士の飲み合わせ
同じ生薬が重複する漢方の併用には注意が必要です。具体的な組み合わせについては以下の記事でまとめています。

特に甘草と麻黄の重複は気をつけてください。内科で処方された漢方と、自分でドラッグストアで購入した漢方を同時に飲むのは危険です。
西洋薬との飲み合わせ
- 甘草を含む漢方+利尿剤:低カリウム血症のリスクが上がる
- 麻黄を含む漢方+エフェドリン含有薬:交感神経が過剰に刺激される
- 大黄を含む漢方+下剤:下痢がひどくなる
- 小柴胡湯+インターフェロン:間質性肺炎のリスク(禁忌)
サプリメントとの飲み合わせ
意外と見落とされがちなのがサプリとの相互作用です。特に甘草を含む漢方とグリチルリチン含有サプリの重複に注意が必要です。甘草エキスはのど飴にも入っていることがあるため、気づかないうちに摂取量が増えることがあります。


漢方を飲む前に必ず相談すべき方
以下に当てはまる方は、自己判断で漢方を飲まないでください。必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
- 妊娠中・授乳中の方
- 高血圧の方
- 心臓・腎臓・肝臓に持病がある方
- 他に薬を飲んでいる方
- ご高齢の方
- お子さまに飲ませたい場合
- アレルギー体質の方
特に妊娠中は禁忌の生薬がいくつかあります。妊娠中の漢方については以下の記事で解説しています。



大黄、牡丹皮、桃仁、紅花、附子などは妊娠中に避けるべきとされています。
参考:ツムラ 漢方について
副作用かもしれないと思ったら
漢方を飲み始めて体調に変化を感じたら、以下の手順で対応してください。
- 一旦服用を中止する
- 症状を記録する:いつから、どんな症状が出たかメモしておく
- 処方した医師・薬剤師に連絡する:自己判断で再開しない
- 症状が重い場合はすぐに病院へ:特に呼吸困難や強い動悸は緊急
漢方を飲み始めてすぐの一時的な症状悪化を「瞑眩(めんげん)」や「好転反応」と呼ぶことがありますが、安易に好転反応と判断するのは危険です。必ず専門家に確認してください。
参考:日本漢方生薬製剤協会


まとめ:正しい知識で安全に漢方を活用しよう
漢方薬は正しく使えば素晴らしいものです。しかし「天然だから安全」という思い込みが一番危ないのです。
正しい知識を持って使うことの大切さを、ぜひ心に留めておいてください。自分の体質に合った漢方を、適切な量で、専門家のアドバイスのもとに使うことが安全な漢方ライフの基本です。漢方選びの基本を知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。



漢方薬を安全に使うための3原則:(1)専門家に相談する (2)今飲んでいる薬をすべて伝える (3)体調の変化を見逃さない
漢方の副作用でよくある失敗パターン
1. 「天然だから安全」と複数の漢方を自己判断で併用する
ドラッグストアで別々の漢方を買って自己判断で同時に飲んでしまう方が非常に多いです。甘草や麻黄が重複していることに気づかず、副作用リスクを高めてしまうのが典型的な失敗パターンです。たとえば葛根湯と芍薬甘草湯を同時に飲むと甘草の量が過剰になり、偽アルドステロン症を起こすリスクが跳ね上がります。漢方を2種類以上飲む場合は必ず薬剤師に確認してください。
2. 体調変化を「好転反応」と思い込んで放置する
漢方を飲み始めてから体調が悪くなったにもかかわらず、「これは好転反応だ」と自己判断して飲み続けてしまうケースがあります。漢方の世界では「瞑眩」という概念はありますが、安易に好転反応と決めつけるのは非常に危険です。むくみ、動悸、湿疹、下痢などの症状が出たら一旦服用を中止し、すぐに医師や薬剤師に相談することが重要です。
3. お薬手帳に漢方の情報を記載していない
病院で処方された西洋薬はお薬手帳に記録しているのに、市販の漢方は記載していない方がとても多いです。これでは薬局で飲み合わせチェックができません。のど飴やサプリに含まれる甘草エキスも含め、摂取しているものをすべて把握してもらうことが副作用防止の第一歩です。市販の漢方であっても薬局で手帳に書いてもらう習慣をつけましょう。


体験者の声
40代女性:「市販の漢方を3種類同時に飲んでいたら足がむくみ始め、薬剤師に相談したところ甘草の合計量が多すぎると指摘されました。1種類に絞ったらむくみがすぐに引きました。知らないうちに過剰摂取していて怖かったです。」
50代男性:「防風通聖散を飲み始めて1週間で激しい下痢になりましたが、好転反応だと思って2週間我慢しました。結局病院に行ったら大黄が体質に合っていないとのことで、処方を変更してもらったらすぐ治りました。我慢せずに早く相談すべきでした。」
30代女性:「漢方を飲み始めて咳が続いたので風邪だと思っていたら、まれに起きる間質性肺炎の初期症状でした。早期に発見できたので大事に至りませんでしたが、漢方でも重い副作用が出ることがあると身をもって知りました。」
よくある質問
Q. 漢方薬で重い副作用が出る確率はどのくらいですか?
重篤な副作用の発生頻度は非常に低いですが、ゼロではありません。適切な処方と定期的な経過観察によってリスクを最小限に抑えることができます。
Q. 市販の漢方薬は処方薬より安全ですか?
市販品は生薬の量が少なめに設定されていますが、副作用のリスクがゼロになるわけではありません。特に複数の漢方を併用する場合は注意が必要です。
Q. 漢方薬の副作用はどのくらいで出ますか?
飲み始めてすぐに出ることもあれば、長期服用後に出ることもあります。甘草による偽アルドステロン症は、数週間〜数ヶ月の服用後に現れることが多いです。
Q. 漢方薬でアレルギー反応が出ることはありますか?
まれですが、生薬にアレルギーを起こすケースがあります。発疹やかゆみ、蕁麻疹が出た場合はすぐに服用を中止し、医師に相談してください。特にキク科の植物にアレルギーがある方は、菊花や蒼朮(そうじゅつ)を含む漢方に注意が必要です。
Q. 漢方薬を長期服用している場合、定期的な検査は必要ですか?
甘草を含む漢方を長期服用している場合は、血液検査で血中カリウム値を定期的に確認することが推奨されています。また肝機能の数値もチェックしておくと安心です。担当医と相談しながら、半年〜1年に1回程度は検査を受けることをおすすめします。
Q. 高齢者が漢方を飲む際に特に注意すべきことはありますか?
高齢者は腎機能や肝機能が低下していることが多いため、生薬の代謝に影響が出る場合があります。特に附子(ぶし)や麻黄を含む漢方は慎重に使う必要があります。また複数の薬を服用していることが多いので、飲み合わせの確認を忘れないでください。以下の記事もご参考ください。



Q. 漢方薬の副作用と西洋薬の副作用はどう違いますか?
西洋薬は特定の成分による予測しやすい副作用が多い一方、漢方薬は生薬の組み合わせや体質との相性によって副作用が変わるため予測が難しい面があります。また漢方特有の「甘草による偽アルドステロン症」や「間質性肺炎」など西洋薬では見られない副作用パターンもあります。
Q. 漢方薬を飲んでいて皮膚に発疹が出た場合はどうすればいいですか?
生薬に対するアレルギー反応の可能性があります。すぐに服用を中止し、発疹の写真を撮っておいて医師に相談してください。特にキク科アレルギーのある方は、蒼朮や菊花を含む漢方で反応が出やすい傾向があります。
Q. 漢方薬の副作用を予防するために定期検査は必要ですか?
甘草を含む漢方を長期服用する場合は、半年〜1年に1回の血液検査(血中カリウム値)が推奨されています。肝機能の数値も併せて確認しておくと安心です。担当医と相談しながら定期的なモニタリングを行いましょう。
Q. 漢方薬を飲んでお腹がゆるくなるのは副作用ですか?
大黄を含む処方では下剤作用により軟便や下痢が出ることがありますが、これは薬理作用の一部です。しかし水のような下痢や腹痛が続く場合は体質に合っていない可能性があるため、医師に相談して用量の調整や処方変更を検討してもらいましょう。
Q. サプリメントに含まれる甘草と漢方の甘草は同じものですか?
同じ成分です。のど飴、サプリメント、漢方薬に含まれる甘草(グリチルリチン)はすべて体内で同じように作用します。複数の摂取源からの合計量が重要なので、漢方を飲んでいる場合はのど飴やサプリの成分表示も確認する習慣をつけてください。



