漢方薬と西洋薬を併用している方は少なくありません。「かかりつけ医から西洋薬をもらっているけれど、漢方も試してみたい」「市販の漢方を飲んでいるけれど、病院の薬と一緒に飲んで大丈夫?」――こうした疑問は多くの方が感じるものです。漢方薬は「自然のものだから安全」というイメージがありますが、組み合わせによっては注意が必要なケースがあります。この記事では、漢方薬と西洋薬の併用で気をつけるべきポイントについて詳しくご紹介します。
なぜ漢方薬と西洋薬の併用に注意が必要なのか
漢方薬は複数の生薬を組み合わせた薬であり、それぞれの生薬が持つ成分が西洋薬の効果に影響を与える場合があります。主に以下のようなリスクが考えられます。
- 効果が強まりすぎる:同じような作用を持つ成分が重複し、副作用が出やすくなる
- 効果が打ち消される:漢方の成分が西洋薬の作用を弱めてしまう
- 新たな副作用が出る:単独では問題なくても、組み合わせで予期しない反応が起きる
特に甘草(かんぞう)を含む漢方薬は、多くの処方に配合されているため注意が必要です。医療用漢方エキス製剤148品目のうち、109処方に甘草が含まれているとされています。

併用で注意が必要な組み合わせ
降圧剤と甘草を含む漢方
甘草に含まれるグリチルリチン酸には、体内でアルドステロン様の作用を示す場合があり、血圧の上昇や低カリウム血症を引き起こす可能性があります。これを「偽アルドステロン症」と呼びます。降圧剤を服用している方が甘草を含む漢方を併用すると、降圧剤の効果が打ち消されたり、低カリウム血症のリスクが高まったりする恐れがあります。
偽アルドステロン症の自覚症状としては、四肢の脱力、ふらつき、歩行困難、筋肉痛、頭重感などが挙げられます。1日あたり甘草2.5g以上の摂取でリスクが高まるとされていますが、低カリウム血症の傾向がある方では1.5g/日でも発症する可能性があります。
ワルファリン(血液凝固阻止剤)と漢方薬
血液をサラサラにするワルファリンは、一部の生薬と相互作用を起こすことがあります。当帰(とうき)や川芎(せんきゅう)を含む漢方(当帰芍薬散、四物湯など)は血流を促進する作用があるため、ワルファリンと併用すると出血リスクが高まる恐れがあります。ワルファリンを服用中の方は、漢方を追加する前に必ず主治医に相談してください。
糖尿病治療薬と漢方薬
一部の生薬には血糖値に影響するものがあるため、糖尿病の治療中に漢方を併用する場合は注意が必要です。甘草やニンジン(人参)を含む漢方が血糖コントロールに影響する可能性が指摘されています。糖尿病治療薬を服用中の方は、必ず主治医に漢方の服用を伝えてください。
利尿剤と漢方薬
甘草を含む漢方と利尿剤を併用すると、低カリウム血症のリスクが相加的に高まる可能性があります。むくみや高血圧で利尿剤を処方されている方は、漢方薬の併用について医師に確認しましょう。
総合風邪薬と麻黄含有漢方
葛根湯や小青竜湯などに含まれる麻黄(まおう)には、エフェドリンという成分が含まれています。市販の総合風邪薬にも同様の成分が含まれていることが多いため、同時に服用すると成分が重複し、動悸や血圧上昇、不眠などの副作用が出やすくなります。
- 降圧剤 × 甘草含有漢方 → 偽アルドステロン症のリスク
- ワルファリン × 当帰・川芎含有漢方 → 出血リスクの増大
- 糖尿病治療薬 × 甘草・人参含有漢方 → 血糖コントロールへの影響
- 利尿剤 × 甘草含有漢方 → 低カリウム血症のリスク
- 総合風邪薬 × 麻黄含有漢方 → 成分の重複による副作用

安全に併用するためのルール
かかりつけ医に漢方の服用を伝える
西洋薬を処方してもらうときに、飲んでいる漢方薬(市販品を含む)を必ず伝えてください。「漢方だから関係ないだろう」と思って伝えない方もいますが、飲み合わせの確認は安全な治療に欠かせません。
おくすり手帳を活用する
漢方薬もおくすり手帳に記録しておくと、病院でも薬局でも自動的にチェックしてもらえます。市販の漢方を飲んでいる場合は、自分で製品名と飲み始めた日付を記入しておきましょう。
服用時間をずらす
漢方薬と西洋薬は、原則として30分以上間隔をあけて服用するのが基本です。漢方薬は食前または食間、西洋薬は食後という形で時間帯を分けるのも有効な方法です。
複数の漢方を併用している場合は甘草の総量を確認する
複数の漢方薬を同時に服用している場合は、それぞれに含まれる甘草の量を合算して確認してください。合計で1日2.5g以上になると偽アルドステロン症のリスクが高まるとされています。薬剤師に相談すると、甘草の総量を計算してもらえます。
体調の変化を見逃さない
併用を始めてから以下のような変化があれば、すぐに医師・薬剤師に相談してください。
- むくみ、体重増加
- 手足の脱力感、筋肉痛
- 動悸、血圧の変動
- 消化器症状(吐き気、下痢など)の悪化
- 出血が止まりにくい

意外な盲点:食品やサプリメントとの重複
甘草(グリチルリチン酸)は、漢方薬以外にものど飴、醤油、味噌、甘味料、健康食品などにも含まれています。漢方薬で甘草を摂取しているのに加えて、日常の食品からもグリチルリチン酸を摂取している可能性があるため、意識しておくことが大切です。
また、健康食品やサプリメントに含まれるセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、多くの西洋薬と相互作用を起こすことが知られています。漢方薬との直接的な相互作用は限定的ですが、西洋薬と漢方薬とサプリメントの三者間での影響を考慮する必要があります。
- 自己判断で漢方薬を追加・中止しないでください
- おくすり手帳に漢方薬の情報も必ず記録しましょう
- 市販の漢方を購入する際も、服用中の西洋薬を薬剤師に伝えてください
- 体調の変化を感じたらすぐに医師・薬剤師に相談しましょう
漢方と西洋薬の「得意分野」の違い
漢方薬と西洋薬はそれぞれ得意とする領域が異なるため、両方の長所を活かして併用することで、より効果的な体調管理が可能になる場合があります。
西洋薬が得意な領域
感染症の治療(抗菌薬)、急性症状の緩和(鎮痛剤・解熱剤)、血圧や血糖値のコントロール(降圧剤・糖尿病治療薬)など、ピンポイントで症状を抑えることに優れています。即効性が高いのも特徴です。
漢方薬が得意な領域
体質の改善、複数の不定愁訴への対応、慢性的な冷えや疲労感のケアなど、体全体のバランスを整えることに向いています。検査で異常が見つからないのに体調が優れない、いわゆる「未病」の段階でのケアにも適しているとされています。
併用のメリット
たとえば、降圧剤で血圧をコントロールしながら、冷えや疲労感の改善に漢方を取り入れるといった使い方が可能です。西洋薬で急性症状を抑えつつ、漢方で体質改善を図ることで、長期的な健康管理につなげることが期待できます。ただし、前述の通り飲み合わせの確認は必須です。
まとめ
漢方薬と西洋薬の併用は正しく行えば問題ないケースが多いですが、甘草の過剰摂取による偽アルドステロン症や、ワルファリンとの相互作用など、注意すべきポイントもあります。最も大切なのは、飲んでいる漢方薬を医師・薬剤師に伝えること、そしておくすり手帳を活用して飲み合わせをチェックしてもらうことです。漢方と西洋薬を上手に組み合わせて、体調管理に活かしていきましょう。漢方と西洋薬はそれぞれ得意とする領域が異なるため、両方の長所を活かした併用は効果的な体調管理につながる可能性があります。自己判断で漢方を追加したり中止したりせず、医師と相談しながら進めていきましょう。
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参考:日本東洋医学会
参考:日本漢方生薬製剤協会


