「キーン」という高音の耳鳴りが気になって集中できない。「ジーン」という低い音が常に聞こえている。耳鳴りは原因が特定しにくく、西洋医学では「様子を見ましょう」と言われることも多い症状です。
そんな耳鳴りに対して、体質そのものを整えることでアプローチする漢方薬が注目されています。漢方では耳鳴りを「水の巡り」「気の滞り」「血の不足」など、体質のタイプに分けて考えるのが特徴です。この記事では、耳鳴りの音のタイプや体質別に用いられる漢方薬を詳しく紹介します。
耳鳴りを漢方ではどう考えるか
西洋医学と漢方のアプローチの違い
西洋医学では、耳鳴りの原因を内耳や聴覚神経の異常、ストレスなどから特定し、原因に対して治療を行います。しかし、原因が特定できないケースや、検査では異常がないのに症状が続くケースも少なくありません。
一方、漢方では「体全体のバランスの乱れが耳鳴りとして現れている」と考えます。原因そのものを取り除くのではなく、体質を整えることで症状の改善を目指すのが漢方の基本的な考え方です。
耳鳴りの音のタイプと体質の関係
漢方では、耳鳴りの音の種類によって体質の傾向を推測することがあります。
- 「キーン」という高音:気の上昇(のぼせ)や肝の高ぶりが関係していると考えられることが多い
- 「ジーン」「ブーン」という低音:水の停滞(水毒)や腎の機能低下が関係していると考えられることが多い
- 「ザーッ」という雑音:血の巡りの悪さ(瘀血)が関係しているケースがある
ただし、音の種類だけで処方が決まるわけではありません。全身の状態や随伴症状を総合的に見て判断するのが漢方の基本です。

耳鳴りのタイプ別に用いられる漢方薬
以下に紹介する漢方薬は、耳鳴りに対してよく用いられるものです。体質に合ったものを選ぶことが最も大切なので、自己判断だけで選ばず、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してから始めてください。
釣藤散(ちょうとうさん)
頭痛やめまい、肩こりを伴う高音の耳鳴りに用いられることがあります。のぼせやすく、朝方に頭痛がある中高年の方に向いているとされています。脳内の血液循環を改善する働きがあると考えられており、高血圧傾向のある方にも使われます。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
めまいやふらつきを伴う耳鳴りに用いられる代表的な漢方薬です。体内の余分な水分(水毒)が原因と考えられる場合に選ばれます。立ちくらみや動悸を伴う方に向いており、過労や睡眠不足で症状が悪化するタイプの方に使用されることが多い処方です。
八味地黄丸(はちみじおうがん)
加齢に伴う耳鳴りに用いられることが多い漢方薬です。漢方で「腎」と呼ばれる生命力の源が衰えることで、聴力の低下や耳鳴りが起こると考えます。足腰の冷え、頻尿、疲れやすさを伴う高齢者の方に向いています。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
ストレスや不安感からくる耳鳴りに用いられます。気持ちが高ぶりやすく、不眠や動悸を伴う場合に選ばれることが多い処方です。精神的な緊張が強い方に向いています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血行不良からくる耳鳴りに用いられることがあります。冷え性でむくみがある女性に向いた処方で、水分代謝と血の巡りを同時に整える働きがあるとされています。貧血傾向のある方に使われるケースが見られます。
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
胃腸が弱く、めまいと一緒に耳鳴りが起こる方に用いられます。冷えやすく、胃がもたれやすい体質の方に向いている処方です。頭が重い感じやふわふわとしためまいを伴う場合に選ばれます。

耳鳴りに漢方薬を選ぶ際の体質チェックポイント
自分に合った漢方薬を見つけるためには、体質の傾向を把握しておくことが参考になります。以下のチェック項目を確認してみてください。
「水毒」タイプの特徴
めまいやふらつきを伴う耳鳴りが多く、天候(特に雨の日や湿度の高い日)に症状が悪化しやすい方はこのタイプの可能性があります。むくみやすい、胃がチャポチャポする感じがある、頭が重い、といった症状を伴うことが多いです。苓桂朮甘湯や半夏白朮天麻湯が候補になります。
「気の上昇」タイプの特徴
のぼせやすく、頭に血が上りやすい方に多いタイプです。高音のキーンという耳鳴りが特徴で、頭痛や肩こり、目の充血を伴うことがあります。イライラしやすい、寝つきが悪いといった症状も見られます。釣藤散や柴胡加竜骨牡蛎湯が候補になります。
「腎虚」タイプの特徴
加齢とともに耳鳴りが現れた方に多いタイプです。足腰が弱くなった、夜間の頻尿がある、白髪が増えた、疲れやすくなったといった「老化サイン」を伴う場合、漢方では腎の機能低下と考えます。八味地黄丸が候補になります。
漢方薬の効果が出るまでの期間
耳鳴りに対する漢方薬の効果は、体質改善を通じて徐々に現れるのが一般的です。
目安は2〜3ヶ月の継続
最低でも2〜3ヶ月は継続して服用することが推奨されています。漢方薬は体質そのものを整える目的で使うため、即効性を期待するものではありません。「1週間飲んで変化がないからやめる」のではなく、ある程度の期間は続けてみることが大切です。
変化を感じたら医師に報告
服用を始めてから「耳鳴りの音が小さくなった」「頻度が減った」などの変化を感じたら、医師に伝えてください。逆に、胃腸の不調やむくみなどの異変が出た場合も、すぐに相談するのが安全です。
漢方と併せて取り入れたい生活習慣
漢方薬だけに頼るのではなく、日々の生活習慣を見直すことで、耳鳴りの改善をより実感しやすくなります。
ストレスを軽減する
耳鳴りはストレスで悪化することが多いとされています。仕事や人間関係のストレスを完全になくすのは難しいですが、散歩や入浴、趣味の時間など、自分なりのリラクゼーション方法を見つけることが大切です。
カフェインとアルコールを控える
カフェインには交感神経を刺激する作用があり、耳鳴りを悪化させる可能性があります。コーヒーや紅茶、緑茶の摂取量を見直してみてください。アルコールも血管を拡張させて耳鳴りに影響を与えることがあるため、控えめにするのが望ましいです。
十分な睡眠を確保する
睡眠不足は自律神経の乱れにつながり、耳鳴りを悪化させる要因の一つです。規則正しい生活リズムを心がけ、7〜8時間の睡眠を確保するようにしましょう。
適度な運動を取り入れる
ウォーキングやストレッチなどの軽い有酸素運動は、血行を促進し、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。激しい運動は逆効果になる場合もあるため、無理のない範囲で取り入れてみてください。
- 音のタイプだけでなく、体質全体(冷え・のぼせ・胃腸の状態など)を総合的に見て選ぶ
- 最低2〜3ヶ月は継続して効果を判断する
- 自己判断での選択は避け、漢方専門医や薬剤師に相談する
- まずは耳鼻科で検査を受けてから漢方を検討するのが安心
- 急に片方の耳だけ聞こえなくなった場合(突発性難聴の可能性)
- 耳鳴りに加えて激しいめまいや吐き気がある場合
- 耳鳴りが日に日に強くなっている場合

まとめ
耳鳴りは原因の特定が難しく、西洋医学だけでは対処が難しいケースもあります。漢方は体質全体を整えることで、耳鳴りの軽減を目指すアプローチです。
大切なのは、自分の体質に合った漢方薬を選ぶこと。音のタイプや随伴症状をもとに、漢方専門医や薬剤師に相談しながら、自分に合った処方を見つけていきましょう。まずは耳鼻科での検査を受けたうえで、漢方も選択肢に加えてみてください。
参考:日本東洋医学会


