花粉症の薬を飲むと眠くなる、口が渇く、集中力が落ちる。抗ヒスタミン薬の副作用に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
漢方薬なら眠気の心配がほとんどなく、仕事や運転に支障をきたしにくいのが大きな魅力です。西洋薬が「アレルギー反応を抑える」アプローチなのに対し、漢方薬は「花粉に負けない体を作る」という根本的な体質改善を目指します。
漢方医学では花粉症を「水毒(すいどく)」や「衛気(えき)の不足」として捉えます。体の防御力を高め、余分な水分を排出することで、花粉に過剰に反応しにくい体質づくりを目指すのが漢方のアプローチです。自分の体質タイプを確認してみたい方は、以下の記事も参考にしてください。



漢方から見た花粉症の3つのタイプ
同じ花粉症でも、症状の出方や体質は人それぞれです。漢方では症状のタイプに応じて処方を使い分けます。
水っぽい鼻水タイプ(寒証・水毒)
透明でサラサラした鼻水がダラダラと止まらず、くしゃみが連発するタイプです。冷え性で、温かい飲み物を飲んだり体を温めたりすると症状が和らぐ傾向があります。体が冷えて水分代謝が滞っている「寒証」の状態で、冬場や朝方に症状が悪化しやすいのも特徴です。
鼻づまりタイプ(熱証・湿熱)
粘り気のある黄色い鼻水が出て、鼻がつまって息苦しいタイプです。副鼻腔炎(蓄膿症)に移行しやすい傾向があり、頭重感や顔面の圧迫感を伴うことがあります。体内に熱と湿気がこもっている状態とされています。
体力低下タイプ(気虚)
花粉症の症状自体はそこまで激しくないものの、疲れやすい、食欲がない、風邪もひきやすいという方がこのタイプです。体の防御力(衛気)が不足しており、根本的な体力を補うことが必要とされています。
花粉症が気になる方におすすめの漢方薬5選
「鼻水の質(水っぽいか粘っこいか)」「鼻づまりの有無」「冷えの程度」がポイントです。症状が変わったら処方の見直しも検討しましょう。迷ったら漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してください。
1. 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
花粉症の漢方薬として最も広く知られている処方です。水っぽい鼻水が止まらない、くしゃみが連発する、目が涙目になるといった症状に用いられます。体を温めながら余分な水分を発散させる働きがあるとされています。
比較的即効性が期待できるとされ、症状が出たらすぐに飲むという使い方もされます。体力が中程度以上の方に向いているとされ、胃腸が弱い方には合わない場合もあります。麻黄が含まれるため、高血圧や心臓に持病がある方は注意が必要です。咳の漢方対策は以下の記事で詳しく解説しています。



2. 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
冷え性で体力がない方の花粉症に用いられます。小青竜湯では胃にこたえる、効果を感じにくいという方に選ばれることがある処方です。強い温め効果があり、冷えが原因で水分代謝が滞っている方に適しているとされます。
鼻づまりよりも、透明な鼻水がダラダラ出る症状が主な場合に処方されることが多いです。高齢者や虚弱体質の方の花粉症にも使われることがあります。
3. 葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
鼻づまりがひどい方に適しているとされます。鼻の奥の炎症を鎮め、通りを良くする働きがあるとされており、慢性的な鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)にも用いられる処方です。
頭痛や肩こりを伴う鼻づまりにも対応し、体を温めて気血の巡りを改善するとされています。体力が中程度以上の方に向いています。


4. 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
目のかゆみや充血を伴う花粉症に用いられます。粘膜の慢性的な炎症を鎮め、鼻炎体質そのものを改善することを目指す処方です。ニキビが出やすい方や、扁桃腺が腫れやすい方にも処方されることがあります。
体質改善を目的とした長期的な服用に向いているとされ、シーズン中だけでなくオフシーズンから飲み始めるのも一つの方法です。
5. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
花粉症の予防・体質改善に用いられます。免疫力(衛気)を高めることで、花粉に過剰に反応しにくい体を目指す処方です。疲れやすい、食欲がない、声に力がないといった「気虚」の症状がある方に適しているとされます。
花粉シーズンの1〜2ヶ月前から飲み始めると、シーズン中の症状が軽減されることがあるといわれています。他の花粉症用漢方薬と併用されることもあります。
症状別の漢方薬の選び方まとめ
花粉症の漢方薬は症状のタイプによって使い分けます。ここで改めて整理してみましょう。
水っぽい鼻水が止まらない、くしゃみが連発するという方には、まず小青竜湯を試してみるのが一般的です。体力がある方向けの処方なので、胃腸が弱い方や冷え性が強い方には麻黄附子細辛湯の方が合うことがあります。
鼻づまりが主な症状の方には葛根湯加川芎辛夷が適しているとされます。鼻の奥が重い、黄色い鼻水が出るといった副鼻腔炎に近い症状がある場合に選ばれます。
目のかゆみや充血が強い方には荊芥連翹湯が候補になります。鼻と目の両方の症状がつらい場合に適しているとされ、慢性的なアレルギー体質の改善にも用いられます。
疲れやすい、風邪もひきやすいといった体力低下が背景にある場合は、補中益気湯で免疫力を底上げするアプローチが取られます。シーズン前から飲み始めるのがポイントです。
花粉症と漢方薬をうまく付き合うコツ
花粉症の漢方治療では「シーズン中の対症療法」と「オフシーズンの体質改善」を使い分けることが大切です。シーズン前からの服用開始が効果的とされています。
花粉症の漢方治療で重要なのは、症状が出てから対処するだけでなく、花粉シーズンに入る前から体質改善を始めることです。補中益気湯のような補気薬を1〜2ヶ月前から飲み始め、シーズンに入ったら小青竜湯などの対症処方を加えるという2段構えの方法が、漢方外来でも実践されています。
西洋薬との併用も可能です。抗ヒスタミン薬で症状を抑えつつ、漢方薬で体質改善を進めるというアプローチも一般的です。漢方薬は眠気が出にくいため、日中は漢方薬で対処し、夜間に抗ヒスタミン薬を使うという使い分けをする方もいます。
食事面では、体を冷やす食べ物や生もの、甘いもの、乳製品の摂りすぎは「水毒」を悪化させるとされています。しょうが、ねぎ、しそなど体を温める食材を意識的に取り入れましょう。れんこんは粘膜を強くする作用があるとされ、花粉症の季節には積極的に取り入れたい食材です。
また、腸内環境を整えることも花粉症対策として注目されています。味噌、納豆、ヨーグルトなどの発酵食品を日常的に摂ることで、免疫バランスの改善が期待できるとされています。過度なアルコール摂取は粘膜の炎症を悪化させる可能性があるため、花粉シーズン中は控えめにするのが望ましいです。
花粉情報は環境省の花粉情報サイトで確認できます。また、漢方と花粉症について詳しくはおうち病院の解説も参考になります。
漢方薬を使う際の注意点
漢方薬は食前または食間(食後2時間程度)に白湯で飲むのが基本です。顆粒タイプはお湯に溶かして飲むと吸収が良くなるとされています。胃が弱い方は食後に服用しても構いません。
花粉症で使われる漢方薬には麻黄を含むものが多いため、高血圧、心臓病、甲状腺機能亢進症の方は注意が必要です。また、甘草を含む処方ではむくみや血圧上昇(偽アルドステロン症)が起こる可能性があります。体調に異変を感じたら速やかに服用を中止し、医師に相談してください。
市販の花粉症用の西洋薬(特にエフェドリン含有の鼻炎薬)と麻黄を含む漢方薬の併用は、成分が重複する可能性があるため避けましょう。複数の漢方薬を同時に服用する場合も、甘草の量が重複して偽アルドステロン症のリスクが高まることがあるため、必ず医師や薬剤師に確認してください。


よくある質問
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Q. 花粉症の漢方薬はいつから飲み始めればいいですか?
体質改善目的の場合は花粉シーズンの1〜2ヶ月前から飲み始めるのが理想的とされています。シーズンに入ってからでも対症療法として服用を開始できます。
Q. 漢方薬で花粉症は治りますか?
漢方薬は体質改善を目指すものであり、花粉症そのものを根治するとは断言できません。ただし、体質が整うことで症状が軽減されたと感じる方は少なくないとされています。個人差がありますので、医師と相談しながら継続してみてください。
Q. 抗ヒスタミン薬と漢方薬は一緒に飲めますか?
基本的に併用は可能です。実際に耳鼻科でも抗ヒスタミン薬と漢方薬を併用する医師は多くいます。ただし、西洋薬の鼻炎薬(特にエフェドリン含有)と麻黄入り漢方薬の併用には注意が必要です。
Q. 漢方薬はどこで買えますか?
ドラッグストアで市販品を購入できるほか、耳鼻科や漢方外来で保険適用の処方を受けることもできます。日本東洋医学会の専門医検索で漢方に詳しい医師を探すこともできます。


