「鍼灸って保険が使えるの?」。意外と知られていませんが、特定の条件を満たせば健康保険を使って鍼灸施術を受けられるのです。ただし、全ての症状に保険が適用されるわけではなく、手続きにもルールがあります。
この記事では、鍼灸の保険適用の条件、対象となる疾患、必要な手続き、費用の目安まで詳しく解説していきます。
鍼灸の保険適用の基本

療養費として支給される
鍼灸の保険適用は、健康保険法第87条に基づく「療養費」として扱われます。病院の治療費のように自動的に保険が適用されるのではなく、一定の条件を満たした場合にのみ療養費として支給される仕組みです。
簡単にいうと、「医師が適当な治療手段がないと判断し、鍼灸での施術が必要と認めた場合」に保険が使えるということです。病院の治療ではなかなか改善しない症状に対して、鍼灸という選択肢を保険で利用できる制度になっています。
利用できる保険は、国民健康保険、協会けんぽ、組合健保、後期高齢者医療制度など、一般的な公的医療保険が対象です。

保険適用の大前提
鍼灸の保険適用には、以下の条件を全て満たす必要があります。
- 対象となる6疾患のいずれかに該当すること
- 医師の同意書(または診断書)があること
- 「医師による適当な治療手段がない」と認められること
- 同一疾患で医療機関(病院)と鍼灸院を同時に受診していないこと
- 施術を行う鍼灸師が国家資格を持っていること
- 施術所が健康保険の受領委任払い契約を結んでいること
これらの条件はハードルが高そうに感じるかもしれませんが、実際にはかかりつけ医に相談して同意書を書いてもらえば、スムーズに進むケースも多いです。
保険適用の対象となる6疾患
対象疾患の一覧
鍼灸の保険適用が認められているのは、以下の6つの疾患に限定されています。
- 神経痛:坐骨神経痛、三叉神経痛、肋間神経痛など。足や顔、胸などに痛みが走る症状
- リウマチ:急性・慢性で各関節が腫れて痛む疾患。関節の朝のこわばりなどが特徴
- 五十肩(肩関節周囲炎):肩の関節が痛み、腕が上がりにくい状態。夜間痛で眠れない人も多い
- 頚腕症候群(けいわんしょうこうぐん):首から肩・腕にかけてのしびれや痛み。デスクワーカーに多い
- 腰痛症:慢性の腰痛。ぎっくり腰の後遺症なども含まれることがある
- 頚椎捻挫後遺症(けいついねんざこういしょう):むちうち症の後遺症。交通事故後の首の痛みなど
各疾患の詳細
神経痛
坐骨神経痛が代表的です。腰からお尻、太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれが走ります。長時間のデスクワークや腰椎の問題で発症することが多いです。鍼灸では痛みの経路に沿ったツボに施術を行い、血流改善と鎮痛をめざします。
五十肩
正式名称は「肩関節周囲炎」です。肩の関節が痛くて腕が上がらなくなる症状で、50代前後に多いことからこう呼ばれています。鍼灸では肩周辺のツボに施術を行い、関節の可動域の改善をめざします。
腰痛症
慢性的な腰痛のことです。レントゲンやMRIで明確な原因が見つからない「非特異的腰痛」が全腰痛の約85%を占めるとされており、こうした慢性腰痛に鍼灸が用いられることが多いです。
施術と施術の合間、デスクワークや立ち仕事で腰に負担がかかる時間をどう乗り切るかも悩みどころです。腰を支えるベルトを併用している方もいるので、使ってよいかどうかは施術者に一度確認してみましょう。
保険適用にならないケース
以下のようなケースは保険適用になりません。
- 慢性的な肩こり(五十肩ではない一般的な肩こり)
- 疲労回復やリラクゼーション目的
- 美容鍼
- 上記6疾患に該当しない症状(不眠、自律神経の乱れ、冷えなど)
- 健康維持・予防目的の施術
同一疾患で病院と鍼灸院を同じ月に受診すると、鍼灸の保険適用が認められないことがあります。保険で鍼灸を受ける場合は、該当する疾患の病院での治療を一旦中断する必要がある場合があります。詳しくは鍼灸院と主治医に相談してください。

保険適用の手続きの流れ

ステップ1:鍼灸院に相談する
まず、保険適用で施術を受けたい旨を鍼灸院に相談します。鍼灸院側が同意書の用紙を持っていることが多いので、その用紙をもらっておくとスムーズに進みます。保険診療に対応しているか確認することも忘れないようにしましょう。
ステップ2:医師に同意書を書いてもらう
医療機関(病院やクリニック)を受診し、医師に「鍼灸施術の同意書」を書いてもらいます。これが保険適用の最も重要なステップです。同意書には、対象疾患の病名、症状の経過、鍼灸施術が必要と考える理由などが記載されます。
同意書を書いてもらう際のポイントは以下の通りです。
- かかりつけ医に率直に「鍼灸を試したい」と伝える
- 「病院の治療だけでは改善しない」旨を説明する
- 鍼灸院からもらった同意書用紙を持参する
- 整形外科やペインクリニックの医師は同意書に慣れていることが多い
ステップ3:鍼灸院に同意書を持参する
医師の同意書を持って鍼灸院に行き、保険適用で施術を受けたい旨を伝えます。施術所が受領委任払いに対応していれば、窓口での支払いは自己負担分のみで済みます。
ステップ4:継続の場合は同意書の更新
保険適用の鍼灸施術を継続する場合は、6ヶ月ごとに医師の同意書を更新する必要があります。期限が切れると保険が適用されなくなるので、更新時期を忘れないようにしましょう。鍼灸院側から更新時期を教えてくれることが多いですが、自分でも把握しておくと安心です。

費用の目安

保険適用の場合
保険適用の場合、3割負担で1回あたり数百円〜1,500円程度が目安です。施術内容や部位数によって金額は変わりますが、自費と比べると大幅に安くなります。初検料(初回料金)がかかる場合もあります。
保険と自費の費用比較
- 保険適用(3割負担):1回数百円〜1,500円程度
- 自費:1回4,000〜8,000円程度
保険適用の場合は施術内容に制限がある(対象疾患の施術のみ)ことは理解しておきましょう。「肩こりもついでに診てほしい」といった追加施術は保険外になることがあります。保険と自費を組み合わせて施術する「混合診療」が可能かどうかは鍼灸院に確認しましょう。
年間で見るとどれくらい違う?
仮に週1回通う場合で計算すると、以下のような差になります。
- 保険適用:月4回 × 1,000円 = 月4,000円(年間約48,000円)
- 自費:月4回 × 6,000円 = 月24,000円(年間約288,000円)
年間で約24万円の差が出る計算です。対象疾患に該当する方は、保険適用を活用しない手はないでしょう。
ちなみに同意書の控えや領収書は、6ヶ月ごとの更新や医療費控除の申告で必要になります。年をまたいでも探さずに済むよう、蛇腹式のドキュメントファイルに1年分まとめておくとラクです。
保険適用で鍼灸を受ける際の注意点
同意書を書いてくれる医師を見つける
実は、医師によっては鍼灸の同意書を書くことに消極的な場合もあります。かかりつけ医に相談しても「よく分からない」と言われることもあります。その場合は、以下の方法を試してみましょう。
- 東洋医学に理解のある医師を探す
- 鍼灸院に相談して、提携している医師を紹介してもらう
- 漢方外来がある病院は同意書に慣れていることが多い
- 整形外科やペインクリニックの医師に相談する
病院との併用に注意
保険で鍼灸を受けている疾患と同じ疾患で病院を受診すると、鍼灸の保険適用が認められないことがあります。これは「療養費の支給要件」として定められているルールです。ただし、別の疾患で病院を受診する場合は問題ありません。
全ての鍼灸院で保険が使えるわけではない
保険を使うには、鍼灸院が「受領委任払い」の届け出をしている必要があります。事前に「保険診療に対応していますか?」と確認してから受診しましょう。保険診療に対応していない鍼灸院もあるので注意が必要です。
施術回数に上限はある?
鍼灸の保険適用には1ヶ月あたりの施術回数の上限は特に設けられていません。ただし、保険者(保険組合など)によっては回数や金額について確認を求めてくる場合があります。あまりに高頻度の施術は不正請求と疑われることもあるので、適切なペースで通うことが大切です。

よくある質問
Q. 労災や交通事故でも鍼灸は保険が使える?
労災保険や自賠責保険(交通事故)でも、鍼灸施術が認められるケースがあります。労災の場合は労働基準監督署、交通事故の場合は保険会社に確認しましょう。交通事故の場合は自賠責保険で鍼灸の施術費用がカバーされることがあります。
Q. 同意書はどの診療科の医師に書いてもらえばいい?
基本的には対象疾患を診察している医師であれば、どの診療科でもOKです。整形外科、内科、ペインクリニックなどが一般的です。漢方を扱っている医師は同意書に慣れていることが多いです。歯科医師は対象外なので注意しましょう。
Q. 高齢者でも保険適用で鍼灸を受けられる?
受けられます。後期高齢者医療制度の対象者でも、条件を満たせば保険適用で鍼灸を受けられます。自己負担割合は年齢や所得によって1割〜3割と異なります。
Q. 保険適用の鍼灸は何回まで受けられる?
回数制限は特に設けられていません。ただし、6ヶ月ごとの同意書の更新が必要で、医師が「まだ鍼灸施術が必要」と判断する限り継続できます。症状が改善すれば同意書の更新が認められない場合もあります。
Q. マイナ保険証(マイナンバーカード)は鍼灸院で使える?
対応している鍼灸院ではマイナ保険証を使って保険適用の施術を受けられます。ただし、全ての鍼灸院がマイナ保険証に対応しているわけではないので、事前に確認しましょう。
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まとめ
鍼灸の保険適用は、6つの対象疾患について、医師の同意書があれば利用できる制度です。手続きは少し手間がかかりますが、自費と比べて費用を大幅に抑えられるメリットがあります。年間で20万円以上の差が出ることもあるため、対象疾患に該当する方はぜひ活用しましょう。
詳しい条件や手続きは、鍼灸の保険適用6疾患の詳細解説も参考にしてみてください。また、ほねごりグループの鍼灸保険解説でも分かりやすくまとめられています。
まずは通いたい鍼灸院に「保険診療に対応していますか?」と問い合わせてみるのが第一歩です。





