「手足が冷たくて眠れない」「夏でもカーディガンが手放せない」――そんな冷えの悩みを抱えている方は少なくありません。漢方の世界では、冷えは「気・血・水」のバランスの乱れによって生じると考えられています。体を温めるには、漢方だけでなく食事や入浴、運動といった生活習慣の見直しを組み合わせることが大切です。この記事では、温活に用いられることの多い漢方や、日常で取り入れやすい温活習慣について詳しくご紹介します。
そもそも「冷え」はなぜ起こるのか
冷えの原因は一つではありません。漢方医学では、冷えを大きく「気虚(エネルギー不足)」「血虚(血の巡りの低下)」「水滞(余分な水分の停滞)」の3タイプに分けて考えます。
気虚タイプ
体を温めるエネルギーそのものが足りていない状態です。疲れやすく、風邪をひきやすい方に多く見られます。食が細い、声が小さい、朝が苦手といった傾向がある方は気虚タイプの可能性があります。
血虚タイプ
血の量や巡りが不足している状態です。手足の末端が冷たくなりやすく、顔色が悪い、爪が割れやすいといった特徴があります。月経のある女性に多く、貧血気味の方もこのタイプに該当しやすいです。
水滞タイプ
体の中に余分な水分がたまっている状態です。むくみやすく、雨の日に体調が悪くなりやすい方に見られます。胃腸が弱く、水分を摂りすぎる傾向のある方が該当しやすいです。

温活に用いられることの多い漢方
冷えのタイプに合わせて選ぶことで、漢方は穏やかに体のバランスを整えるサポートをしてくれます。ここでは、温活の場面でよく名前が挙がる漢方をタイプ別にご紹介します。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
手足の末端が冷える方に用いられることの多い代表的な漢方です。当帰・桂枝が血行にはたらきかけ、呉茱萸・生姜が体を内側から温めるとされています。しもやけや冷えによる頭痛・腰痛が気になる方にも処方されることがあります。効果の実感には個人差があり、ある研究では平均36日程度とされていますが、最短7日から最長105日と幅があります。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
体力の低下を伴う冷えが気になる方に用いられます。貧血気味で疲れやすく、食欲がわかないといった症状が重なっている場合に選択されることがあります。気と血の両方を補うはたらきが期待されており、全身の冷えとだるさが続く方に向いているとされています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
女性に多い水分代謝の乱れからくる冷えに用いられることの多い漢方です。むくみを伴う冷えが気になる方に処方されるケースが多く、産婦人科でも広く使われています。月経不順や月経痛が気になる方にも選ばれることがあります。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
全身の冷えと疲労感が強い方に用いられる漢方です。手術後や大きな病気のあとの体力回復にも処方されることがあり、気・血の両方を大きく補うはたらきが期待されています。食欲がなく顔色が優れない方に向いているとされています。
真武湯(しんぶとう)
お腹が冷えやすく、下痢をしやすい方に用いられる漢方です。消化機能の低下からくる冷えに対応するとされており、体力があまりない方に処方されることが多いです。新陳代謝が低下して体が冷えているタイプに向いています。
- 冷えのタイプ(気虚・血虚・水滞)に合った処方を選ぶことが大切です
- 2〜3ヶ月は継続して様子を見るのが一般的です
- 迷ったら漢方専門医や薬剤師に相談しましょう
- 体質に合わないと感じたら無理に続けず、処方の見直しを相談してください
食事で体を温めるコツ
漢方と併せて、毎日の食事でも温活を意識すると相乗的なサポートが期待できます。
温性食材を積極的に取り入れる
生姜・ネギ・にんにく・シナモン・唐辛子などは、漢方医学で「温性」に分類される食材です。特に生姜は加熱すると「ショウガオール」という成分が増え、体の深部を温めるはたらきが高まるとされています。スープや煮物に加えるのがおすすめです。
冷たい飲食物を控える
氷入りの飲み物や生野菜サラダの摂りすぎは、胃腸を冷やす原因になりやすいです。飲み物は常温か温かいものを選び、サラダも温野菜に切り替えてみてください。白湯を朝一杯飲む習慣は、手軽にできる温活の一つです。
たんぱく質をしっかり摂る
たんぱく質は消化時に「食事誘発性熱産生(DIT)」といって体温を上昇させるはたらきがあります。三大栄養素の中で最もDITが高いのがたんぱく質です。肉・魚・卵・大豆製品をバランスよく取り入れましょう。

入浴で血行を促す方法
ぬるめのお湯にゆっくり浸かる
38〜40℃のぬるめのお湯に15〜20分ほど浸かると、体の芯から温まりやすくなります。熱すぎるお湯は交感神経を刺激してかえって血管を収縮させるため、ぬるめがポイントです。半身浴でも十分に温まることができます。
入浴剤に生薬を活用する
よもぎ・生姜・トウキ・センキュウなどの生薬を使った入浴剤は、温活の補助として人気があります。市販の薬用入浴剤にも生薬配合のものが増えており、手軽に取り入れることが可能です。
入浴後の保温も大切
せっかく温まっても、入浴後に体を冷やしてしまうと効果が半減します。湯上がりにはすぐに靴下を履き、温かい飲み物を摂るようにしましょう。髪を濡れたまま放置するのも冷えの原因になりやすいです。
運動で熱を生み出す体をつくる
下半身の筋肉を動かす
筋肉は体の中で最も多くの熱を生み出す器官です。特に太ももやふくらはぎなど下半身には全身の筋肉の約70%が集中しているため、スクワットやウォーキングで下半身を動かすと効率よく体温が上がりやすくなります。
ストレッチで血行を促す
デスクワークなどで長時間同じ姿勢が続くと、血行が滞りやすくなります。1時間に1回は立ち上がって簡単なストレッチを行うだけでも、末端の冷えが気になりにくくなります。ふくらはぎのストレッチは特におすすめです。

温活を続けるための心がけ
温活は短期間で劇的に変わるものではなく、毎日の積み重ねが大切です。漢方も2〜3ヶ月を目安に継続し、食事・入浴・運動をバランスよく組み合わせていきましょう。冷えのタイプや体質は一人ひとり異なるため、自分に合った方法を見つけることがポイントです。
季節ごとの温活の工夫
冷えは冬だけの問題ではありません。夏場でもエアコンの冷気で体が冷えている方は多いです。夏はカーディガンやレッグウォーマーで冷房対策を、冬は腹巻や湯たんぽで体の芯を温めるなど、季節に合わせた温活を意識しましょう。
温活の記録をつける
毎日の体温や冷えの度合い、食事内容などを簡単に記録しておくと、変化に気づきやすくなります。漢方を飲み始めてからの変化を把握するためにも、記録は有効です。アプリや手帳を使って、無理のない範囲で続けてみてください。
- 漢方は体質に合ったものを選ぶことが大切です。合わないと感じたら医師・薬剤師に相談してください
- 持病のある方や服薬中の方は、温活に漢方を取り入れる前に主治医に確認しましょう
- 極端な冷えが続く場合は甲状腺機能低下症などの疾患が隠れている可能性もあります。気になる方は医療機関を受診してください
まとめ
冷えは漢方医学では「未病」のサインとされています。漢方・食事・入浴・運動を組み合わせた温活で、冷えにくい体を目指していきましょう。漢方は体質に合ったものを選ぶことが大切ですので、まずは漢方専門医や薬剤師に相談してみてください。一つひとつの習慣を無理なく続けていくことが、温活の最も大切なポイントです。
参考:日本東洋医学会
参考:日本漢方生薬製剤協会
参考:クラシエ|漢方セラピー


