「朝どうしても起きられない」「立ち上がるとめまいがして動けない」「午前中はぐったりしているのに、夕方からは元気になる」。こうした症状に心当たりがある方は、起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)の可能性があります。
起立性調節障害は中高生の約10%に見られるとされる自律神経の不調で、「怠けている」と誤解されやすいのが大きな問題です。成長期の自律神経の発達が追いつかず、血圧や血流の調整がうまくいかないことが原因と考えられています。
この記事では、起立性調節障害に対して漢方がどのようにアプローチするのか、おすすめの処方と体質別の選び方を詳しく解説します。

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起立性調節障害を漢方ではどう考える?


「気虚」|エネルギー不足で血を巡らせる力が弱い
東洋医学では、血液を全身に送り出す原動力を「気」と呼びます。気が不足すると、立ち上がったときに脳へ血液を送る力が足りず、めまいや立ちくらみが起こりやすくなります。疲れやすい、声が小さい、食欲がない方は「気虚」タイプの可能性が高いです。
「水滞」|水分代謝の乱れとめまい
体内の水分の巡りが滞ると、頭部に余分な水がたまってめまいや頭痛、吐き気を引き起こすとされています。雨の日や湿気の多い日に調子が悪くなる方、むくみやすい方はこのタイプが疑われます。
「血虚」|栄養不足と脳への血流低下
「血」が不足した状態で、顔色が悪い、めまいがする、立ちくらみがする、爪がもろいといった症状が見られます。思春期の女の子は月経の開始により血虚になりやすく、起立性調節障害と重なることがあります。
「肝気鬱結」|ストレスによる自律神経の乱れ
学校でのストレス、友人関係の悩みなどから「肝」の気が滞ると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。精神的なストレスが症状の引き金になっているケースでは、肝の気の巡りを改善するアプローチが有効です。
起立性調節障害に対する漢方のアプローチは、「何が不足しているか」「何が滞っているか」を見極めて、気・血・水のバランスを整えることが基本です。
起立性調節障害によく用いられる漢方薬
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
起立性調節障害の漢方治療で最も多く処方される代表的な処方です。体内の余分な水分を排出し、めまいや立ちくらみを和らげる方向に働くとされています。
「朝起き上がるとクラクラする」「ふわふわした感じのめまいがある」「動悸がする」といった症状がある方に適しています。臨床報告では、4〜8週間の服用で朝のめまい症状の改善が見られたという報告もあります。
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
胃腸が弱く、吐き気やめまいを伴う方に用いられる処方です。苓桂朮甘湯と並んで起立性調節障害によく使われる漢方薬で、「水滞」と「脾虚」が重なったタイプに適しています。
頭が重い、フラフラする、吐き気がする、食欲がないという症状が揃っている場合に検討されます。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
全身の気を補い、「昇提作用」(内臓や気を引き上げる力)で血圧を上向きにサポートする処方です。疲れやすい、食欲がない、風邪をひきやすいといった気虚症状が強い方に適しています。
小建中湯(しょうけんちゅうとう)
虚弱体質のお子さんに広く使われる処方で、お腹を温めて胃腸の機能を高めます。腹痛を訴えやすい、食が細い、体力がないタイプの起立性調節障害に向いています。甘味があるため子供でも飲みやすいです。
真武湯(しんぶとう)
冷えが強く、新陳代謝が低下している方に用いられます。手足の冷え、下痢しやすい、めまい、倦怠感といった症状がある方に適しており、体を温めながら水分代謝を整えます。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血を補い、水分代謝を整える処方です。貧血気味、冷え性、むくみやすいといった症状がある思春期の女の子の起立性調節障害に用いられることがあります。


体質別の漢方の選び方
めまい・立ちくらみが中心のタイプ(水滞)
立ち上がるとクラクラする、フワフワしためまいがある方は苓桂朮甘湯が基本です。胃腸が弱く吐き気もある場合は半夏白朮天麻湯に切り替えます。
疲れやすい・体力がないタイプ(気虚)
全体的にエネルギーが不足している方は補中益気湯で気を補うことから始めます。お子さんで腹痛も伴う場合は小建中湯が選択肢になります。
冷えが強い・下痢しやすいタイプ(陽虚)
手足が冷たい、お腹が冷えると下痢する、寒い日に症状が悪化するという方は真武湯で体を温めるアプローチが適しています。
貧血気味・生理で悪化するタイプ(血虚)
思春期の女の子で、生理前後に起立性調節障害の症状が悪化する場合は当帰芍薬散で血を補うアプローチが合いやすいです。
起立性調節障害の診断は、まず小児科や内科で起立試験などの検査を受けることが大切です。似た症状を示す他の疾患を除外したうえで、漢方治療を検討してください。
日常生活での養生ポイント


起き上がり方を工夫する
朝は急に立ち上がらず、ベッドの上で座った状態を数分キープしてから立ち上がることが大切です。いきなり直立すると、脳への血流が追いつかずめまいが悪化します。
水分と塩分を意識的に摂る
起立性調節障害の方は水分と塩分の摂取が推奨されています。1日あたり水分を意識的に多めに摂り、塩分も極端に制限しないことがポイントです。ただし、他の持病がある場合は医師に確認してください。
適度な運動を取り入れる
全く動かないと筋力が低下し、下半身の血流が悪くなって症状が悪化します。無理のない範囲でウォーキングや軽いストレッチを取り入れることが大切です。
弾性ストッキングの活用
下半身の血液が滞るのを防ぐため、弾性ストッキングの着用が勧められることがあります。特に長時間の立ち仕事が必要な場面では有効です。
夜型生活を改善する
起立性調節障害の方は夜型になりやすいですが、できるだけ午前中に日光を浴びて体内時計をリセットすることが大切です。無理に早起きを強制するよりも、少しずつリズムを調整していく方が効果的です。


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学校との連携について
起立性調節障害は周囲の理解が得にくい疾患です。「朝起きられない=怠けている」という誤解が学校側にあると、お子さんの心理的な負担がさらに大きくなります。
医師の診断書を学校に提出し、起立性調節障害が体の病気であることを伝えておくことが大切です。遅刻や欠席が増えても柔軟に対応してもらえるよう、担任の先生やスクールカウンセラーとの連携を早めに整えておきましょう。
保健室での休憩を許可してもらう、午後から登校するなどの段階的な対応が、お子さんの学校復帰をスムーズにする助けになります。漢方で体質を整えながら、無理のないペースで学校生活に戻れるよう環境を整えることが理想的です。
よくある質問
Q. 起立性調節障害に漢方薬はどのくらいで変化を感じますか?
個人差がありますが、苓桂朮甘湯の場合は4〜8週間程度で変化を感じ始める方が多いとされています。ただし、体質や症状の程度によってはもう少し時間がかかることもあります。
Q. 西洋薬と漢方薬の併用はできますか?
ミドドリン塩酸塩(メトリジン)などの昇圧剤と漢方薬を併用するケースはあります。必ず主治医に相談のうえ、併用の可否を確認してください。
Q. 起立性調節障害は大人にもありますか?
大人の起立性調節障害も増えており、漢方でのアプローチが検討されるケースが増えています。体質に合った処方で、めまいや倦怠感の緩和が期待されます。
Q. 起立性調節障害は何歳ごろまで続きますか?
多くの場合、高校卒業前後で自然に軽快していくとされていますが、成人後も症状が残るケースもあります。漢方と養生を続けながら、焦らず経過を見守ることが大切です。
Q. 起立試験とはどんな検査ですか?
横になった状態と立ち上がった状態で血圧や脈拍を測り、自律神経の反応を調べる検査です。痛みはなく短時間で終わる検査なので、お子さんでも安心して受けられます。
漢方薬の飲み方のコツ


起立性調節障害のお子さんに漢方薬を飲ませる場合、朝の体調が悪い時間帯は服用が難しいことがあります。その場合は、昼食前と夕食前の2回に分けて服用する方法を医師と相談してみてください。
漢方薬は基本的に食前または食間(食事と食事の間)に飲むことが推奨されていますが、胃腸が弱い方は食後でも構わない場合があります。飲みにくい場合は、温かいお湯に溶かして少しずつ飲む方法もおすすめです。
まとめ
起立性調節障害は自律神経の不調が原因で、朝起きられない、めまい、倦怠感などの症状が特徴です。漢方では苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、補中益気湯などを体質に合わせて選び、気・血・水のバランスを整えるアプローチを行います。
漢方と並んで、起き上がり方の工夫、水分・塩分の摂取、適度な運動、生活リズムの改善も大切な養生です。周囲の理解と適切なケアがあれば、多くの方が徐々に改善に向かうとされています。
起立性調節障害でお悩みの方は、まず医療機関で正確な診断を受けたうえで、漢方に詳しい医師に相談してみてください。
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参考リンク:
起立性調節障害におすすめの漢方薬|起立性調節障害改善協会
起立性調節障害の処方薬は?漢方は効果がある?|LITALICO発達ナビ
起立性調節障害に漢方という選択|一二三堂薬局
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