「肌に発疹は出ていないのに、とにかくかゆい」「夜になるとかゆさで眠れない」「掻いても掻いてもかゆみが止まらない」――皮膚掻痒症は、見た目にはわかりにくいのに本人にとっては非常につらい症状です。
皮膚掻痒症とは、目立った皮疹がないにもかかわらず強いかゆみが続く状態のことです。乾燥肌や加齢によるものが多いですが、原因がはっきりしないケースもあり、西洋医学的な抗ヒスタミン薬だけでは十分にコントロールできないことがあります。
この記事では、皮膚掻痒症にお悩みの方に向けて、漢方的な考え方やおすすめの処方、日常でできる養生法を詳しく解説していきます。

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皮膚掻痒症を漢方ではどう考える?


「血虚生風」|血が足りないためにかゆみが起きる
東洋医学では、皮膚の潤いは「血」によって保たれていると考えます。血が不足すると皮膚が乾燥し、「風(ふう)」が生じてかゆみを引き起こすとされています。この状態を「血虚生風(けっきょせいふう)」と呼びます。
高齢者や産後の女性、貧血傾向の方に多く、秋冬の乾燥期に悪化しやすいのが特徴です。
「陰虚内熱」|体の潤い不足で内側に熱がこもる
体の「陰(潤い成分)」が不足すると、相対的に熱が過剰な状態になります。夜間にかゆみが強くなる、手足のほてり、のぼせ、口の渇きなどを伴う方はこのタイプの可能性があります。更年期以降の方に多く見られます。
「湿熱蘊膚」|余分な湿と熱が皮膚に滞る
体内に余分な水分と熱が蓄積し、それが皮膚に影響を与えてかゆみを引き起こすタイプです。汗をかきやすい、体が重い、胃腸が弱いなどの症状を伴うことがあります。
「肝鬱化火」|ストレスによる熱がかゆみに変わる
精神的なストレスや怒りが体内に熱を生み、それがかゆみとして皮膚に現れるタイプです。イライラしやすい、ストレスでかゆみが悪化する、脇腹が張るなどの特徴があります。
皮膚掻痒症は「血の不足」「潤い不足」「熱のこもり」「ストレス」など、原因が多岐にわたります。自分のかゆみがどのタイプに当てはまるかを見極めることが、合う漢方薬を選ぶカギです。
皮膚掻痒症によく用いられる漢方薬


当帰飲子(とうきいんし)
皮膚掻痒症の漢方治療で最もよく使われる処方です。血を補い、皮膚を潤す四物湯をベースに、かゆみ止めの生薬(蒺藜子・防風・荊芥)と皮膚のバリア機能を高める黄耆が加わった構成です。
体力が弱い方でも服用しやすく、冷え性の方にも適しています。特に高齢者の乾燥によるかゆみに多く処方されます。飯塚病院漢方診療科でも皮膚掻痒症の代表的な処方として紹介されています。
温清飲(うんせいいん)
四物湯と黄連解毒湯を組み合わせた処方で、血を補いながら炎症による熱を冷ますことができるのが特徴です。皮膚の乾燥とほてり・赤みの両方がある方に適しています。
当帰飲子よりも熱を冷ます力が強いため、のぼせやほてりを伴う皮膚掻痒症に向いています。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
比較的体力があり、のぼせやすい方のかゆみに用いられます。体内の余分な熱を冷ます「清熱解毒」の代表的な処方です。興奮しやすい、のぼせ、熱感があるタイプの皮膚掻痒症に適しています。
六味地黄丸(ろくみじおうがん)
腎の陰を補い、体全体の潤いを回復させる処方です。加齢や更年期に伴う陰虚タイプの皮膚掻痒症に用いられます。足腰のだるさ、のぼせ、手足のほてり、口の渇きなどを伴う方に適しています。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
ストレスが関係するかゆみに検討される処方です。気の巡りを改善し、肝の働きを整えます。イライラ、不安、のぼせ、肩こりなどを伴う皮膚掻痒症の方に用いられます。
消風散(しょうふうさん)
風と湿による皮膚のかゆみに対応する処方です。かゆみが広範囲に及ぶ場合や、発汗後にかゆみが悪化する場合に検討されます。掻くとジュクジュクするタイプのかゆみにも対応できます。


体質別の漢方の選び方
乾燥が中心でかゆみが出るタイプ(血虚生風)
皮膚がカサカサして粉を吹いている、秋冬に悪化する、冷え性で疲れやすいといった症状の方は血虚生風タイプです。当帰飲子で血を補い、皮膚を潤すアプローチが基本になります。
ほてり・のぼせを伴うタイプ(陰虚内熱)
夜間にかゆみが強い、手足がほてる、口が渇くといった症状が見られます。更年期以降の方に多いタイプです。温清飲で血を補いつつ熱を冷ますか、六味地黄丸で陰を補うアプローチが検討されます。
赤み・炎症が強いタイプ(湿熱・実熱)
体力があり、のぼせやすい、掻くと赤くなりやすい、イライラしやすいといった特徴があります。このタイプには黄連解毒湯で余分な熱を冷ます方法が合っています。
ストレスでかゆみが悪化するタイプ(肝鬱化火)
ストレスが多いとかゆみがひどくなる、情緒が不安定、肩こりや頭痛があるといった症状が見られます。加味逍遙散で気の巡りを改善し、ストレス由来の熱を鎮めるアプローチが適しています。
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皮膚掻痒症の養生法|日常でできるセルフケア


入浴の工夫
お風呂の温度は38~40℃のぬるめに設定し、長湯を避けることが大切です。熱いお湯は皮脂を奪い、かゆみを悪化させます。ボディソープは低刺激のものを選び、ゴシゴシ洗いは控えましょう。
保湿はお風呂上がりが勝負
入浴後5分以内に保湿剤を全身に塗ることで、水分の蒸発を防ぎ、皮膚の潤いをキープできます。セラミド配合のクリームやワセリンが適しているとされています。
食事で血と陰を補う
かゆみの根本改善には、食事からも血や陰を補うことが重要です。
血を補う食材:レバー、ほうれん草、にんじん、黒ごま、なつめ、クコの実、豚肉
潤いを補う食材:白きくらげ、山芋、豆乳、梨、はちみつ、松の実
かゆみを助長する食材(控えめに):辛いもの、アルコール、揚げ物、チョコレート
こうした食材の性質や組み合わせ方を、自己流ではなく基礎から体系立てて学びたい方には、NPO法人日本統合医学協会の「養生薬膳資格取得講座」があります。東洋医学の考え方にもとづいて体質・体調を探る方法から、季節の食材を使った家庭料理まで、オンライン講座とテキストで学べます。試験もオンラインで受けられる形式です。



衣類と寝具の見直し
肌に直接触れる衣類は綿素材を選び、化学繊維やウールは避けましょう。寝具もこまめに洗濯し、ダニ対策を心がけることでかゆみの誘発を減らせます。
皮膚掻痒症は、まれに内臓疾患(肝臓・腎臓・甲状腺の病気など)が原因で起こることがあります。かゆみが長期間続く場合は、まず医療機関を受診して原因を確認しましょう。
Q&A|漢方と皮膚掻痒症に関するよくある質問
Q. 漢方薬と抗ヒスタミン薬は併用できる?
一般的に漢方薬と抗ヒスタミン薬は作用機序が異なるため、併用可能な場合がほとんどです。ただし、処方によっては注意が必要なこともあるため、事前に医師や薬剤師に相談してください。
Q. 当帰飲子はどこで手に入る?
当帰飲子はツムラやクラシエから処方薬として出ており、医療機関で保険適用で処方してもらえます。一部の漢方薬局やオンライン通販でも入手可能です。
Q. 皮膚掻痒症に漢方で変化を感じるまでの期間は?
個人差がありますが、2~4週間で何らかの変化を感じる方が多いとされています。乾燥が強い場合は、皮膚の潤いが戻るまでに1~3か月程度かかることもあります。
Q. 高齢者でも安心して漢方を使える?
当帰飲子は体力が弱い方にも使えるよう設計されているため、高齢者にも広く処方されています。ただし、甘草を含む処方は長期使用時に偽アルドステロン症のリスクがあるため、定期的な検査が推奨されます。


まとめ|皮膚掻痒症は体質からのアプローチがカギ
皮膚掻痒症は見た目にはわかりにくいですが、東洋医学では「血の不足」「潤いの不足」「熱のこもり」など、体内のバランスの乱れとして捉えてアプローチします。
当帰飲子を中心に、体質やかゆみのタイプに合った漢方薬を選ぶことで、抗ヒスタミン薬だけでは対応しきれない慢性的なかゆみにも手が打てる可能性があります。保湿や食養生も組み合わせて、コツコツ取り組んでいきましょう。
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参考:飯塚病院 漢方診療科|皮膚掻痒症 小太郎漢方|当帰飲子の解説 巣鴨千石皮ふ科|黄連解毒湯
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