「腹痛と下痢が繰り返し起こる」「栄養吸収がうまくいかず体重が減ってきた」「ステロイドや免疫調節薬の副作用が気になる」。クローン病は消化管に慢性的な炎症が起こる疾患で、長期にわたる治療が必要です。
西洋医学による治療が基本となりますが、漢方薬を補助的に活用することで、症状の緩和や体力の回復をサポートできる可能性があります。
この記事では、クローン病に対する漢方の考え方と、補助的に用いられるおすすめの処方を解説します。

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クローン病を漢方ではどう考える?


「脾虚」|消化吸収力の根本的な低下
クローン病では消化管の炎症により栄養の吸収が妨げられます。東洋医学では、この状態を「脾虚(ひきょ)」として捉え、胃腸の機能を立て直すことが治療の土台になると考えます。
「湿熱」|炎症が活発な時期
活動期の炎症は東洋医学では「湿熱」の状態にあたります。腹痛、下痢、粘血便、発熱、口内炎などの症状が現れます。この時期は湿熱を取り除く処方が中心となります。
「気血両虚」|長期化による全身の消耗
クローン病が長期化すると、栄養不足と慢性炎症により気と血の両方が消耗します。体重減少、貧血、倦怠感、免疫力の低下などが深刻化することがあります。
「瘀血」|腸管の狭窄・瘻孔への関与
クローン病の合併症として狭窄(腸管が狭くなる)や瘻孔(腸管に穴が開く)がありますが、東洋医学ではこうした器質的な変化に「瘀血」が関与していると考えることがあります。
クローン病の漢方アプローチは、活動期は「湿熱を除く」、寛解期は「脾を補い気血を回復させる」のが基本です。西洋医学の治療と並行して、体質改善をサポートします。
クローン病に補助的に用いられる漢方処方
大建中湯(だいけんちゅうとう)
クローン病の漢方治療で最も注目されている処方です。理化学研究所の研究(発表年:2022年)では、大建中湯がマウスモデルで腸管の炎症を改善するメカニズムが解明されたと報告されています。
以下のような症状に用いられます。
- 腸管の蠕動運動が弱く、お腹が張る
- 術後の腸閉塞予防
- 腸管狭窄に伴う腹痛
- 冷えが強く、腹部の冷感がある
大建中湯は体を温める作用が強い処方です。炎症が活発で下痢がひどい時期には症状を悪化させる可能性があるため、活動期の使用は慎重に判断する必要があります。
大建中湯には市販品もありますが、クローン病で使う場合は自己判断ではなく、必ず主治医に相談したうえで取り入れてください。実際の価格や剤形は各ショップで確認できます。
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
胃もたれ、腹満感、下痢、口内炎などの症状に用いられる処方です。クローン病に伴うアフタ性口内炎にも活用されることがあり、胃腸の「寒熱」のバランスを整える働きがあるとされています。
柴苓湯(さいれいとう)
炎症を抑えながら水分代謝を整える処方で、潰瘍性大腸炎だけでなくクローン病でも使われることがあります。ステロイド併用時のサポートとして処方されることもあります。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
寛解期の体力回復に用いられる処方です。気を補い、脾の機能を高めることで、栄養の吸収を助け、全身の活力を取り戻していきます。倦怠感が強い、食欲がない、風邪をひきやすいなどの気虚症状が目立つ方に適しています。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
気と血の両方が著しく不足している方に用いられる処方です。長期間の闘病で体力と栄養が大きく消耗しているケースで選択されます。
人参湯(にんじんとう)
冷えが強く、胃腸の機能が極端に低下している方に用いられます。体を温めながら消化吸収力を回復させます。水様性の下痢が続く方に適しています。


漢方を取り入れる際の大切な注意点


西洋医学の治療が基本
クローン病は漢方薬だけで管理できる疾患ではありません。5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などの西洋医学による治療が柱であり、漢方はそのサポート役です。主治医の指示なく西洋薬を中断することは避けてください。
栄養療法との両立
クローン病では栄養療法(成分栄養剤や半消化態栄養剤)が重要な治療の一つです。漢方薬と栄養療法を併用する際は、摂取のタイミングなどを医師に相談しましょう。
漢方薬の副作用にも注意
甘草を含む処方では偽アルドステロン症のリスクがあります。また、大建中湯の温性作用が炎症を悪化させる場合もあるため、処方選びは漢方に詳しい医師に任せましょう。
クローン病の養生法


食事の養生
- 低脂肪食:脂肪の摂りすぎは腸管に負担をかけるため控える
- 消化の良い食材:おかゆ、煮込みうどん、豆腐、白身魚など
- 脾を補う食材:山芋、かぼちゃ、米など胃腸にやさしい食材
- 控えたい食材:辛いもの、アルコール、冷たいもの、繊維が硬い生野菜
食事の内容は主治医や管理栄養士の指示が基本ですが、「脾を補う食材」のような東洋医学の食の考え方そのものを知っておくと、毎日の献立を見直すときの手がかりになります。食材の性質や季節ごとの食養生を体系的に学びたい方には、オンラインで薬膳を学べる「養生薬膳資格取得講座」という選択肢もあります。



ストレス管理と休息
ストレスはクローン病の増悪因子です。無理をしすぎず、体と心の休息を大切にしましょう。適度な散歩やストレッチは気の巡りを助けますが、体調に合わせて無理のない範囲で行ってください。
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よくある質問(Q&A)
Q. 大建中湯は市販で買える?
大建中湯は医療用漢方製剤として処方されることが多い処方です。市販品も存在しますが、クローン病での使用は医師の判断のもとで行うことが望ましいです。
Q. 漢方でクローン病の寛解を維持できる?
漢方薬だけで寛解を維持することは推奨されていません。西洋医学の維持療法と併用して体質改善をサポートするのが適切な位置づけです。
Q. IBD(炎症性腸疾患)専門の漢方外来はある?
消化器内科で漢方も扱っている医療機関や、IBDに漢方を併用している専門施設があります。主治医に漢方を併用したい旨を相談し、連携して治療を進めましょう。


まとめ
クローン病に対する漢方は、大建中湯・半夏瀉心湯・柴苓湯・補中益気湯などの処方を、病期や体質に応じて補助的に活用するのが基本です。
西洋医学の治療が柱であることは変わりませんが、漢方で体質を底上げし、寛解の維持や生活の質の向上をサポートすることは十分に意義があります。主治医と相談のうえで、自分に合った漢方アプローチを見つけていきましょう。
Q. 成分栄養剤と漢方薬の飲み合わせは大丈夫?
成分栄養剤(エレンタールなど)と漢方薬は基本的に併用可能ですが、服用のタイミングをずらすことが推奨されます。漢方薬は食前・食間、栄養剤は別のタイミングで摂取するなど、医師の指示に従いましょう。
Q. クローン病で漢方薬を保険適用で処方してもらえる?
大建中湯、半夏瀉心湯、柴苓湯、補中益気湯などはいずれも保険適用の漢方薬です。消化器内科で漢方も扱っている医療機関であれば、保険で処方してもらえます。
クローン病のタイプ別おすすめ処方まとめ
クローン病の漢方アプローチは、病期と体質に応じた処方の使い分けが基本です。以下にタイプ別のおすすめ処方を整理します。
寛解期・腹部の冷え+膨満感タイプ
→ 大建中湯が適しています。お腹を温め、腸の蠕動運動を正常化します。術後の腸閉塞予防としても活用されています。ただし、炎症が活発な活動期には使用を控える必要があります。
口内炎+胃もたれタイプ
→ 半夏瀉心湯で胃腸の寒熱バランスを整えます。クローン病に伴うアフタ性口内炎にも活用されることがある処方です。胃もたれ、げっぷ、腹満感などの消化器症状全般に対応します。
炎症コントロール中のステロイド併用タイプ
→ 柴苓湯で炎症を抑えながら水分代謝を整えます。ステロイドの減量をサポートする目的で使われることもあります。活動期から寛解移行期にかけて用いられることが多い処方です。
体力低下・栄養不足タイプ(気血両虚)
→ 補中益気湯や十全大補湯で気血を回復させます。食欲を高め、栄養の吸収を助けることで全身の状態を底上げします。長期にわたる消耗が著しい方に特に適しています。
冷え+水様性下痢タイプ
→ 人参湯や真武湯で体を温めながら胃腸機能を立て直します。明け方の下痢が続く方や、冷えると症状が悪化する方に向いています。
漢方を取り入れる際の実践的なステップ
- 主治医に相談:現在の治療(西洋薬・栄養療法)との兼ね合いを確認する
- 漢方の専門家を受診:IBDに理解のある漢方外来を探す。日本東洋医学会のサイトで漢方専門医を検索可能
- 処方開始&経過観察:2〜4週間ごとに症状の変化を記録し、処方を微調整する
- 長期的な体質改善:寛解を維持しながら、3〜6か月単位で体質の変化を見守る
大切なのは、西洋医学の治療チームと漢方の専門家が情報を共有しながら連携することです。どちらか一方だけに頼るのではなく、両方の良いところを活かしたアプローチが理想的です。
Q. クローン病で手術後に漢方は使える?
手術後の回復期に補中益気湯や十全大補湯などの気血を補う処方が用いられることがあります。また、大建中湯は術後の腸閉塞予防として処方されることがあります。手術後の漢方薬の使用タイミングは外科医と漢方医の両方に相談して決めましょう。
Q. 小腸型と大腸型で漢方の処方は変わる?
クローン病の病変部位(小腸型・大腸型・小腸大腸型)によって症状が異なるため、処方も変わることがあります。小腸型で栄養吸収不良が著しい場合は補中益気湯や十全大補湯が優先されやすく、大腸型で血便が多い場合は芎帰膠艾湯が検討されることもあります。
参考:理化学研究所|大建中湯の作用機構を解明 漢方坂本|クローン病と漢方 新前橋すこやか内科|大建中湯とクローン病
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