漢方薬の成分表を見ると、かなりの確率で「甘草(かんぞう)」が入っていることに気づくはずです。実は漢方薬の約7割に甘草が配合されているといわれています。それだけ重要な生薬です。
甘草とは

マメ科カンゾウ属の植物の根
甘草はマメ科の多年草で、根と根茎を生薬として使います。名前の通り甘みがあり、砂糖の約50倍の甘さを持つ「グリチルリチン」が主成分です。世界中で最も古くから使われてきた生薬の一つです。
「国老」と呼ばれる生薬界の調整役
甘草は中国で「国老(こくろう)」と呼ばれています。国老とは「国を治める老臣」の意味で、他の生薬同士の衝突を調和させる重要な役割を担っているためです。日本東洋医学会でも甘草は基本的な生薬として位置づけられています。

甘草の漢方的な効能
調和諸薬(ちょうわしょやく)
他の生薬の効果を調整し、副作用を軽減します。処方全体のバランスを整える役割です。そのため約7割もの漢方薬に配合されているのです。
補気(ほき)
気を補って脾(消化器系)を強くします。疲労回復や食欲増進に用いられます。甘味は漢方で「脾」に作用すると考えられていて、甘草の甘みが消化機能をサポートします。
止痛(しつう)
痛みを止める作用です。特に筋肉の痙攣を伴う痛みに効きます。芍薬甘草湯(こむら返りの特効薬)は芍薬と甘草の2味だけで構成されています。それだけ甘草の止痛作用は強力です。
解毒(げどく)
毒を中和する作用です。食中毒や薬物中毒の応急処置に甘草湯が使われることもあります。他の生薬の毒性を軽減する「調和」の作用にもつながっています。
止咳(しがい)
咳を止めます。甘草に含まれるグリチルリチンには鎮咳・去痰作用があります。喉の痛みにも効き、甘草湯は喉風邪の定番処方です。
甘草を使った代表的な漢方薬

・芍薬甘草湯:こむら返り、筋肉痛に(即効性あり)
・甘草湯:のどの痛み、咳に
・甘麦大棗湯:不眠、ヒステリーに
・葛根湯:風邪のひき始めに(甘草が調和役)
・小柴胡湯:慢性肝炎、胃腸炎に

甘草の注意点:偽アルドステロン症

最も注意すべき副作用
甘草を大量に、または長期間摂取すると「偽アルドステロン症」が起きることがあります。血圧上昇、むくみ、低カリウム血症などの症状が出ます。複数の漢方薬を同時に飲むと甘草の重複が起きやすいため、注意が必要です。
1日の甘草上限量の目安
一般的に甘草の1日摂取量は2.5g以内が安全とされています。ただし体質や体重によって個人差があります。PMDAでも甘草含有医薬品の注意喚起がされています。
甘草の重複に注意
複数の漢方薬を飲んでいると、それぞれに甘草が入っていて、合計すると大量になっていることがあります。医師や薬剤師に全ての服用薬を伝えて、甘草の総量をチェックしてもらうことが大事です。
市販の漢方薬を選ぶときに、いま飲んでいる薬やサプリとの重複を確かめたい場合の相談先として、PharmaX株式会社が運営するパーソナル漢方薬店「YOJO」があります。LINEで友だち追加して約3分の体質チェックに答えると、漢方に詳しい薬剤師に無料で相談でき、飲み合わせもメッセージで無料相談できます。料金は公式サイトで確認できます。持病のある方・服薬中の方・妊娠中や授乳中の方は、事前に医師や薬剤師にご相談ください。

・手足のだるさ、しびれ
・筋力低下
・血圧上昇
・むくみ
・低カリウム血症
これらの症状が出たらすぐに服用を中止して医師に相談してください。厚生労働省のサイトでも詳しい情報が確認できます。
日常生活での甘草
甘味料としての利用
甘草は食品添加物としても使われていて、醤油や漬物の甘味料に含まれていることがあります。リコリス(甘草)飴も海外では一般的なお菓子です。
化粧品にも
グリチルリチン酸は抗炎症作用があり、化粧水や日焼け止めなどスキンケア製品にもよく使われています。肌荒れ防止成分として優秀です。
よくある質問
Q. 市販の漢方薬に含まれる甘草は安全?
用法・用量を守れば基本的に安全です。ただし複数の漢方薬や甘草を含む健康食品を同時に摂る場合は注意が必要です。心配なら薬剤師に相談しましょう。
Q. 甘草アレルギーってある?
まれにアレルギー反応が出ることがあります。発疹、かゆみ、息苦しさなどが出たらすぐに服用を中止して医療機関を受診してください。
Q. 子どもが甘草を含む漢方薬を飲んでも大丈夫?
子ども用の用量が設定されている漢方薬なら問題ありません。ただし大人より体が小さいぶん、甘草の影響を受けやすいため、必ず用量を守ってください。
Q. 甘草が入っていない漢方薬はある?
あります。漢方薬の約30%には甘草が含まれていません。桂枝茯苓丸や五苓散などが代表例です。偽アルドステロン症が心配な方は、甘草フリーの処方を医師に相談してみてください。
Q. リコリス菓子やリコリスティーの甘草は漢方の甘草と同じ?
同じ植物由来です。リコリス(Glycyrrhiza)は甘草の英語名です。そのため漢方薬と甘草入りのお菓子やハーブティーを同時に摂ると、知らず知らずのうちに甘草の過剰摂取になるリスクがあります。気をつけてください。
Q. 甘草の副作用が出たらどうすればいい?
むくみ、血圧上昇、脱力感など偽アルドステロン症の症状が出たら、すぐに服用を中止して医療機関を受診しましょう。ほとんどの場合、服用をやめれば症状は改善します。自己判断で放置するのだけは絶対にやめてください。


甘草でよくある失敗パターン
失敗1:複数の漢方薬を自己判断で飲んで甘草の重複摂取になる
漢方薬の約7割に甘草が配合されているため、複数の漢方薬を同時に飲むと甘草の量が跳ね上がることがあります。例えば葛根湯と芍薬甘草湯を同時に飲むと、それだけで甘草が5g以上になってしまうこともあります。1日2.5g以内が安全とされる甘草を大幅に超えてしまい、偽アルドステロン症のリスクが一気に高まります。自己判断で複数の漢方薬を飲むのは危険なので、必ず医師や薬剤師に相談してから飲み合わせを確認してもらいましょう。
失敗2:芍薬甘草湯を頓服ではなく毎日飲み続けてしまう
こむら返りの特効薬として有名な芍薬甘草湯です。即効性があるため重宝しますが、毎日常用するのは危険です。芍薬甘草湯は甘草の配合量が多い処方で、長期連用すると偽アルドステロン症を発症するリスクがあります。本来は「足がつった時に飲む」頓服薬として使うものです。頻繁にこむら返りが起きる方は、根本的な原因(ミネラル不足、血行不良など)を漢方外来で相談して、体質改善の処方を出してもらう方がよいでしょう。
失敗3:甘草が入ってるのを知らずに健康食品と漢方薬を併用する
リコリス(甘草)入りのハーブティーや、グリチルリチン酸を含むサプリメント、醤油や漬物の甘味料にも甘草が使われていることがあります。漢方薬と一緒にこうした食品を大量に摂ると、知らず知らずのうちに甘草の過剰摂取になってしまいます。特に輸入品のハーブティーやお菓子にはリコリスが使われていることが多いため、パッケージの成分表をチェックする習慣をつけましょう。


甘草に関するQ&A
Q. 甘草の偽アルドステロン症はどのくらいの量で起きる?
個人差が大きいですが、1日5g以上の甘草を2週間以上継続すると発症リスクが高まるとされています。ただし体質によっては少量でも発症する方がいるため、むくみや血圧上昇、脱力感を感じたらすぐに服用を中止して医療機関を受診しましょう。高齢者や腎機能が低下している方は特に注意が必要です。
Q. 甘草を含まない漢方薬を選ぶことはできる?
できます。漢方薬の約30%には甘草が含まれていません。桂枝茯苓丸、五苓散、当帰芍薬散などが代表例です。偽アルドステロン症が心配な方は、甘草を含まない処方を医師にリクエストすることもできるので、遠慮なく相談してみてください。
Q. 甘草の副作用は服用をやめれば治る?
ほとんどの場合、服用を中止すれば数日〜数週間で症状は改善します。ただし低カリウム血症が進行していると回復に時間がかかることもあります。症状に気づいた時点で早めに対処することが大事です。放置は絶対にしないでください。
Q. グリチルリチン酸入りの化粧品は甘草の副作用と関係ある?
化粧品に含まれるグリチルリチン酸は肌への塗布なので、経口摂取とは違って偽アルドステロン症のリスクはほぼありません。化粧品としてのグリチルリチン酸は抗炎症作用が優秀で、敏感肌の方にも安心して使えます。あくまで口から摂取する量に注意すれば問題ありません。
Q. 漢方薬以外で甘草が含まれてる意外なものは?
醤油や味噌の甘味料、漬物の調味料、リコリス菓子、一部のハーブティー、のど飴、胃腸薬にもグリチルリチンが使われていることがあります。日本では甘草は食品添加物として広く使われているため、漢方薬と合わせて総量を意識することが大事です。特に海外のリコリス菓子は甘草含有量が多いので注意してください。





